院長コラム

母体救命講習会インストラクターコース受講とインストラクター補助を経験して

私が世話人を務めています玉川産婦人科医会では、年に1回地域の産婦人科医・助産師・看護師を対象とした母体救命講習会を開催しています。
今年は、医療従事者を対象とした基本的な講習会(ベーシックコース)で指導する立場のインストラクターを養成するための講習会(インストラクターコース)を初めて開催しました。私自身も午前中のインストラクターコースを受講し、午後のベーシックコースでは、インストラクター補助の立場で指導にも携わることができました。
医学的な内容もさることながら、他人を指導する際のポイントをスペシャリストの先生方からご指導頂きました。
今回は、この講習会で学んだことを一部ご紹介したいと思います。

 

 

山本五十六の名言

山本五十六は太平洋戦争時の連合艦隊司令長官であり、多くの名言を残しています。中でも最も有名な名言は、人材育成に関する次の言葉ではないでしょうか。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」

今回の講習会でも、このような流れで指導が行われました。まずは、インストラクターの先生方が、母体救命のシナリオを演じます。受講生は、それを踏まえて実際にシミュレーションします。この後、皆で行動を振りかえり、問題点を受講者に気付かせるようにして、改善点を話し合います。

 

 

「見る」と「行う」とでは大きく違う

事前にテキストを読み、講師から講義を受け、インストラクターのデモンストレーションを見学します。しかし、頭では理解したつもりでも、実際にシナリオを演じてみると、思うようにいかないことがわかりました。

単に読んだり見たりする“インプット”だけでなく、実際に自ら行動する“アウトプット”を繰り返すことが、その学びを真に身につける唯一の方法であると感じました。

 

 

「ほめる」時は、具体的に伝える

人を動かすためには、ほめることが大切です。とはいえ、具体的に何が良かったのかを伝えないと、ただ単にほめただけでは、その学びは身につかないとのことです。

「○○したことは、△△の理由でよかった」というように話をすることが、指導する上でとても重要のようです。

 

 

大切なポイントを絞り、強調する

今回の母体救命講習会での指導の目標は、母体の重症化を防ぎ、救命率を上げることです。そのためには、いくつか大切なポイントがありますが、たくさんのことを伝えようとしても、受けて側が消化不良をおこしてしまいます。

大切なポイントを3つくらいに絞り、その代わり繰り返し伝えて、最後にもう一度強調することが重要とのことでした。

 

 

成人学習の特徴

インストラクターとして指導する対象は、ある程度経験を積んだ“大人”です。大人を指導する際には、「成人学習の6つの特徴」を理解すること事が有用のようです。

○ 実利的:すぐに役立つものを求める。
○ 動悸:解決したい問題という動悸がある。
○ 自律的:言われなくても自分から学ぶ。
○ 関連性:自分の仕事と関連性のあることを学びたい。
○ 目的指向性:何のための学ぶのかが明確である。
○ 経験:自らの経験から強い影響を受ける。

 

 

今回の講習会で多くのことを学びましたが、母体救命講習会での指導だけでなく、当院のスタッフの教育、そして患者様の診療にも役立つのでは、と思われます。
当院の目的である「患者様お一人おひとりにとりまして良質な医療の提供」のために、今後もスタッフ一同、学び続け、実践して参ります。