院長コラム

マインドフルネスを生活習慣に

先日、東京医療センター緩和ケア研究会におきまして、「マインドフルネス ~心を整える新たな手法~」という講演会が開催されました。演者は、臨済宗のお寺のご住職であり、精神科医でもある川野泰周先生で、マインドフルネスに関する多くの著書がございます。
今回は、川野先生のご講演や著書を参考に、マインドフルネスについて情報を共有したいと思います。

 

 

マインドフルネスとは

最近、グーグルなどの企業で職員にマインドフルネスを推奨していることが話題になっています。川野先生によると、マインドフルネスとは「今この瞬間の体験に注意を向け、評価をせず、とらわれない状態で観ること」と定義されています。

もともと、マインドフルネスは「禅」や仏陀の教えが基になっており、「気付く力」と「受け容れる心」を兼ね備えた生き方を送るための方法と考えられています。

私は宗教的な背景に関しては詳しくないので、「マインドフルネスとは、頭の疲労やストレスを軽減させるリラックス方法」と捉えています。

 

 

マインドフルネスと医療

医療の現場でも精神科領域を中心に、治療やケアにマインドフルネスを取り入れている施設が増えてきているそうです。
海外の報告では、うつ病の再発抑制する効果、不安障害を軽快させる効果、そして更年期障害を軽快させる効果など、マインドフルネスの有用性が注目されています。

 

 

マインドフルネス実践偏

○ 「呼吸瞑想」

講演会の中で参加者も体験した瞑想法で、手軽でいつでもできる、マインドフルネスの基本のようです。

・ 椅子に腰掛けても、床の上でもできます。
・ 背筋を伸ばして、軽くあごを引きます。
・ 手のひらを上にして、膝か太ももにのせます。
・ 目を閉じて、自然に呼吸します。
・ その際、鼻を出入りする空気の流れを意識します。
・ 雑念が浮かんだら、そっと呼吸に意識を戻します。
・ 時間は30秒程度でもよく、慣れれば5分、10分と続けるそうです。

ポイントは雑念が浮かんでもいいとのこと。意識を元に戻す「切り替え力」を身に付けることが大切との事です。
実際に経験すると、気持ちがスッキリする感じがします。

 

○ 「歩く瞑想」と「スロージョギング」

これは川野泰周先生の著書「心と身体の正しい休め方」に書かれていた方法です。
「歩く瞑想」では、①後ろ足のかかとが上がる ②後ろ足のつま先が上がる ③その後ろ足が前に移動してくる ④その足が前足として着地する という4つのアクションを意識して、足裏の感覚を味わいながら丁寧に歩く瞑想方法だそうです。

「スロージョギング」では、歩くのと同じくらいのスピードでゆっくり走ることが大切のようです。また、ゆっくり走りながら筋肉や呼吸を意識し、足裏の感覚を丁寧に観察することがポイントとの事です。

最近の研究では「歩く瞑想」と「スロージョギング」により、脳神経や中枢神経の再生・修復に関与する蛋白質の分泌が促進されることがわかってきたそうです。これが、マインドフルネスが脳疲労の軽減に効果がある理由の一つであると思われます。

私も以前からスロージョギングをしていますが、いろいろ考えながら走ることが多かったので、これからは「今の身体の感覚」を意識して走ろうと思います。

 

 

生活習慣病をはじめ、多くの病気の治療・予防には薬物療法だけでなく、食事・運動・睡眠といった生活習慣の改善が大切です。それと同時に、ストレスをいかに軽減させて、疲労を回復させるかも重要なポイントです。
その一つの手段として、日常生活に「マインドフルネス」を取り入れてみるのもいいのでは、と思っています。
産婦人科領域では、特に月経前症候群、産前産後の疲労や抑うつ、更年期障害でお悩みの女性に有効かもしれません。
ご興味のある方は是非「マインドフルネスな生活」をお試し下さい。