院長コラム
もし下腹部にコブは触れたら、それは巨大骨盤内腫瘍かもしれません
下腹部痛や月経痛などの辛い自覚症状があれば、婦人科を受診される方も多いでしょう。
しかし、「下腹部にしこりが触れる」、「最近下っ腹が出てきて、スカートやズボンがきつくなった」程度であれば、そのまま放置される方も少なくありません。
もしかすると、巨大骨盤内腫瘍が隠れているかもしれないのに・・・
巨大骨盤内腫瘍の正体
巨大骨盤内腫瘍の多くは子宮腫瘍か卵巣腫瘍が考えられます。
(1)子宮腫瘍
ほとんどが良性の子宮筋腫ですが、閉経後の方の場合、悪性の子宮肉腫の可能性も否定できません。
ある程度は超音波検査やMRI検査などで鑑別することができますが、手術で摘出した検体を病理学に検査をして、最終診断をします。
子宮筋腫であれば手術で治療は終了しますが、もし子宮肉腫でれば、追加治療が必要になることもあります。
(2)卵巣腫瘍
卵巣腫瘍の場合、良性・悪性に加えて、境界型もあり、組織型も多様です。画像検査に加えて、腫瘍マーカー検査を参考にして診断します。
良性の卵巣腫瘍であれば手術による摘出で終了しますが、境界型・悪性の場合は、多くのケースで抗がん剤による追加治療が必要になります。また、手術をする前に抗がん剤治療を行うケースもあります。
周辺の臓器への影響
巨大な骨盤内腫瘍の場合、子宮筋腫などの良性腫瘍であったとしても、あまり楽観視できません。
(1)血栓症
巨大骨盤内腫瘍による影響で最も重要な疾患は、下肢の深部静脈血栓症です。もし骨盤内に巨大な腫瘍があると、骨盤腔の静脈を圧迫し、下肢の静脈が血行不良となり、血栓という血の塊が血管内にできやすくなります。
血栓が微細で少量であれば、自然に溶けますが、長期にわたって下肢の血流が不良ですと、大きな血栓が生じやすくなります。
もし、何かのきっかけで血栓が流れ、肺の血管を詰まらせると肺塞栓症となり、大変危険です。
(2)腎不全
両則の腎臓から膀胱に尿管が走っていますが、巨大骨盤内腫瘍が両側の尿管を圧迫し、尿の流れを堰き止め、水腎症という腎臓を腫らしてしまう病態を引き起こします。
その状態が長引けば両則の腎不全となり、人工透析や腎臓移植が必要な状態になりかねません。
下腹部のコブや違和感に気づいたら、将来後悔しないためにも、早めに受診して下さい。
必要に応じて東京医療センター、関東中央病院などの高次施設へ紹介致します。