院長コラム

女性の痛みに対する漢方薬

昨日、日赤医療センター漢方外来担当の先生から、痛みに用いる漢方薬についてのご講演がありました。

今回は、そこでの学びを中心に、当院における漢方薬の処方について説明します。

 

 

月経痛への処方

○ 芍薬甘草湯

筋肉の緊張による急激な疼痛に処方します。月経痛の痛みは子宮筋の緊張が主体であるため、子宮筋の緊張を緩めることで疼痛を緩和します。

尚、他の漢方薬は連続して、ある程度の期間服薬して頂きますが、芍薬甘草湯は月経開始5日前頃から月経開始3日目頃まで、7~10日間のみ服用して頂くケースが多いです。

 

○ 当帰芍薬散

比較的体力の低下した女性で、冷え症・浮腫がみられる方に処方します。月経時の下腹部痛だけでなく、腰痛にも効果があるといわれています。

 

○ 当帰建中湯

やせ型で、体力が低下してあり、胃腸が弱い方に処方します。月経痛が激しい方は、当帰芍薬散より当帰建中湯を優先して用いることもあります。

 

○ 桂枝茯苓丸

体格はしっかりしている冷え症の方に用います。月経痛だけでなく、子宮や卵管の炎症が原因と思われる下腹部痛にも有効な場合があります。

 

 

消化器系の痛みへの処方

○ 桂枝加芍薬湯

比較的体力が低下した方で、腹部膨満があり、腹痛、下痢、便秘を認める方に用います。

 

○ 柴胡桂枝湯

やせている方で、急性胃腸炎、過敏性腸症候群など、炎症や心因性要素が原因となっている場合に用います。

 

○ 四逆散

適応症は柴胡桂枝湯と同じですが、やせているから体力が充実している方まで、幅広い体格の方に用いることができます。

 

○ 大柴胡湯

こちらも、適応症は柴胡桂枝湯と同じですが、筋弛緩作用、鎮痛作用、鎮痙作用が強いため、比較的体力がある方に処方されます。

 

 

神経障害への処方

○ 八味地黄丸

中年以降の方の慢性腰痛、坐骨神経痛、末梢神経障害、排尿障害、萎縮性腟症などに処方します。

 

○ 牛車腎気丸

適応症は八味地黄丸と同じですが、痛み、浮腫、しびれが強いときには牛車腎気丸を選択します。

 

○ 疎経活血湯

体力が中等度で、主に腰部から下肢の関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛を認める方に用います。ただし、中高年女性の首・肩こりに対して有効であったとの報告もあります。

 

 

婦人科外来での月経痛、腹痛、神経痛に対しては、ホルモン剤、消炎鎮痛剤、鎮痙剤など西洋の薬物を用いることが多いですが、症状によっては漢方薬を用いることも少なくありません。
多くの漢方薬の中から、患者様の体型や体質、症状に合った最善の薬剤を選ぶよう、いつも心掛けております。