院長コラム
その月経痛の原因は「子宮内膜症」かも知れません
月経痛の原因には、明らかな病気がない「機能性」のものと、子宮や卵巣関連の病気が原因となっている「器質性」のものとがあり、子宮内膜症は器質性に分類されます。
子宮内膜症は、最近特に増加しており、性成熟女性の10人に1人は子宮内膜症といわれています。
今回は、子宮内膜症の概要についてお話致します。
子宮内膜症とは
本来であれば子宮の内側にある子宮内膜組織が、何らかの原因で卵巣、腹膜、子宮を支える靱帯など、子宮内側以外の場所に発生し、増殖することがあります。
これを子宮内膜症といいます。
特に、卵巣にできた子宮内膜症は、増殖・出血を繰り返すうちに、チョコレート様の古い血液で満たされた袋(のう胞)になるため、「チョコレートのう胞」とも呼ばれます。
子宮内膜症の症状
子宮内膜症の患者さんの9割に月経痛が認められ、7割の方に月経時以外の下腹部痛がみられます。その他、腰痛、排便痛、性交痛など、ほとんどの方が疼痛に悩まされています。
さらに、不妊の原因にもなり、不妊女性の2人に1人は子宮内膜症ともいわれています。
反対に、このような症状があれば子宮内膜症を疑う必要があります。
子宮内膜症の原因
未だに原因は明らかになっていませんが、最も有力な説が「月経血逆流説」です。
妊娠が成立しないと子宮内膜は剥がれます。これが月経血で、その多くは腟を通り体外に排泄されます。
しかし、月経血の一部は卵管を逆流し腹腔内に出てしまい、月経血に含まれる子宮内膜組織が腹膜や卵巣などに移植されます。
その結果、子宮内膜組織が増殖し子宮内膜症が発症する、という考え方が月経血逆流説です。
子宮内膜症の発症と月経状態
現代女性は昔と比べ、初経年齢が早くなり、初産年齢の高齢化、出産回数の減少、授乳期間の短縮などの影響で、月経回数が増加しています。
月経回数が増加すると、腹腔内に逆流する月経血も増加し、子宮内膜組織が腹膜や卵巣に移植する機会が増加します。
つまり、近年の子宮内膜症の増加は、生涯の月経回数の増加と関係しています。
子宮内膜症の関連する病気
子宮内膜症の患者さんは不妊になりやすいだけでなく、妊娠しても「前置胎盤」「早産」「前期破水」の頻度が増えるといわれています。
また、後年には「卵巣がん」「子宮体がん」「脳梗塞」などのリスクを高めることも知られています。
子宮内膜症は決して侮れません。
月経痛はもちろん、排便時・性交時に下腹部痛や腰痛を認める方は、是非受診して下さい。