院長コラム
お嬢さんをお持ちのお母さんへ「3つのお願い」
先日、日本女性医学会学術集会に参加して参りました。女性医療の分野ではわが国最大の学会であり、今回も様々な講演会を拝聴し、多くの事を学ばせて頂きました。
さて今回は、女の子のお子さんをお持ちのお母さん方に、3つのことをお願いしたいと思います。
思春期のお嬢さんをお持ちのお母さんへ
“HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種を受けさせて下さい”
HPVワクチンによる副反応のため、厚生労働省からの積極的勧奨は現在差し控えられたままとなっています。しかし、国内外の様々な研究から、HPV感染や子宮頚部異形成、子宮頚がんに対してHPVワクチンが効果的であることは、疑う余地はありません。
一方、HPVワクチンによる副反応24個の「多様な症状」は、HPVワクチン接種者だけでなく、非接種者にも認められ、両者の頻度の差はみられないと、報告されています。つまり、これらの副反応はHPVワクチンに特異的なものではない、ということです。むしろ、副反応に対する国を挙げての診療体勢が進んでいる中、最近はHPV ワクチンを安心して接種できる環境が整いつつあると思います。
HPVワクチン接種で最も大切なポイントは、セクシャルデビュー前に3回の接種が全て終了していることです。ちなみに、世田谷区では10~15歳の方は無料で接種ができます。
お母さん、お嬢さんの将来の健康のために、是非ご英断下さい。
20歳以上のお嬢さんをお持ちのお母さんへ
“子宮頚がん検査のため、お嬢さんとご一緒にいらして下さい”
近年、子宮頚がんは20~30代女性で急増しています。そのため、この年代の方には最低でも2年に1回は子宮頚がん検査を受けて頂く事が推奨されています。しかし、20代での受診率は10~20%と非常に低く、この年代の受診率向上の対策が急務となっています。
なかなか受診率が上がらない理由にひとつに、初めて一人で婦人科を受診することに対する抵抗感がある、といわれています。ところが、お母さんがお嬢さんに受診を勧めると、受診率が増加したという調査があります。
ただ単にお嬢さんにお勧めするだけでなく、お母さんがお嬢さんをお連れして、お二人ご一緒に子宮がん検査をされてみるのはいかがでしょうか?親子でショッピングを楽しむ感覚で、是非子宮頚がん検診にいらして下さい。
最後に、お嬢さんをお持ちの全てのお母さんへお願いがあります。
月経にまつわるトラブルなど、お母さんに気軽にご相談できる空気を、お嬢さんが思春期の頃から作って頂きたいと思います。
そして、お母さんが通っているクリニックで構いませんので、お嬢さんにも「かかりつけ産婦人科」を持つことをお勧めして下さい。
女性を生涯にわたってサポートすること、それが産婦人科医の仕事です。