院長コラム

「水ぼうそう(水痘)」患者さんが増加しています。妊婦さんは要注意!

先日、東京都福祉保険局から通達があり、6/24~6/30の1週間における水痘患者報告数が注意報基準を超えたとの通達がありました。
もし、妊婦さんが妊娠中初めて水痘に感染してしまった場合、週数によっては胎児に影響を及ぼす可能性があります。
今回は水痘と妊娠について、「産婦人科診療ガイドライン 産科編2017」(日本産科婦人科学会発行)、「母子感染」(金原出版)などを参考に、情報を共有したいと思います。

 

 

水痘の概要

水痘は、水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、感染経路は空気感染(空気中に漂っているウイルスを吸い込む)、飛沫感染(ウイルスが含まれる咳やくしゃみのしぶきを吸い込む)、接触感染(ウイルスが付着した手で触れる)、および母体から胎児への垂直感染があります。

潜伏期間は10~21日で、軽い発熱や頭痛などの前駆症状のあと、全身に水疱が広がり、38度前後の発熱が見られます。その後数日にわたり、紅斑、丘疹、水疱、痂皮(かさぶた)が、体幹を中心に頭部や外陰部などにも混在してみられます。全ての発疹が痂皮になるまで6日程度かかり、発疹出現の1~2日前から出現後4~5日、あるいは全てが痂皮化するまで伝染力があります。

通常は軽症ですが、妊婦さんの水痘初感染は重症化しやすく、10~20%に肺炎を併発します。一度感染すれば二度とかかりませんが、水痘・帯状疱疹ウイルスが神経細胞に潜伏感染し、過労やストレス、加齢などにより再活性化すると帯状疱疹になります。ちなみに、妊婦さんが帯状疱疹になっても胎児には影響ありません。

 

 

母子感染(1)先天性水痘症後群

妊娠初期、特に妊娠13~20週に水痘になってしまった場合、ウイルスが胎盤を経て胎児に感染することがあります。これを先天性水痘症候群といい、その頻度は1~2%以下で、症状は四肢皮膚瘢痕、四肢低形成、眼症状(小眼球症など)、神経症状(小頭症、水頭症など)などです。

 

 

母子感染(2)周産期水痘

出産前5日から産褥2日の間に妊産褥婦さんが水痘にかかってしまった場合、児が周産期水痘になってしまう可能性があります。その頻度は30~40%ですが、生後5~10日に水痘を発症し重症化することがあります。

妊娠末期に水痘を発症した場合、周産期水痘を避けるため、子宮収縮抑制剤を投与し(保険適応はありません)妊娠期間を延長させ、母体の抗体を胎児の移行させる“時間稼ぎ”をすることもあります。

 

 

治療と予防

妊婦さんが水痘を発症した場合は、重症化を防ぐためにアシクロビルという抗ウイルス薬を投与します。妊娠期間中どの時期に使用しても、胎児への影響はありません。ただし、母体へのアシクロビルの投与が先天性水痘症候群の予防・改善に繋がるかどうかは、まだわかっていません。

水痘の免疫が明らかでない妊婦さんが水痘患者さんと濃厚接触した場合(同居家族に水痘発症者がいる場合、患者さんと5分以上対面した場合、同室に60分以上いた場合)、静注用ガンマグロブリン投与が推奨されています(保険適応はありません)。ただし、当院では対応しておらず、大学病院や周産期センターなどでご相談頂く事になる旨、ご了承下さい。

 

 

最近、水痘・帯状疱疹ウイルスの抗体がない妊婦さんが増えているようです。
できれば妊娠前に血液検査で抗体の有無を確認し、陰性であれば水痘ワクチンを接種(内科)されることをお勧めします。
尚、水痘ワクチンは妊娠中に接種することができず、また、接種後は2ヶ月間避妊する必要があります。