院長コラム

「働く女性の健康増進調査2018」から学んだ事

6月10日に開催されました「Women’s Health Forum 2018シンポジウム」に参加し、多職種6名の演者の先生方から大変有意義なお話を伺いました。
今回はその中から、働く女性の健康増進調査を行った日本医療政策機構の講演「女性のヘルスリテラシーと労働生産性の考え方 ~健康経営、女性活動躍進法をふまえて~」について、一部お伝えします。

 

 

「女性に関するヘルスリテラシー」とは

「働く女性の健康増進調査2018」では、「女性が健康を促進し維持するため、必要な情報にアクセスし、理解し、活用していくための能力」を女性に関するヘルスリテラシーの定義としています。

つまり、病気の知識だけでなく、情報の取捨選択、医療関係者等への相談、女性特有の症状への対処といった行動が伴うことが重要であると、考えられます。

 

 

調査結果の注目点

(1) ヘルスリテラシーが高い人ほど、仕事のパフォーマンス(労働生産性)が高い

月経前症候群や月経困難症などのため、元気な状態と比較して、仕事のパフォーマンスが半分以下に低下する女性が約半数見られました。

しかし、ヘルスリテラシーが高い人は、月経前症候群や月経困難症の影響をあまり受けずに、仕事のパフォーマンスへのダメージが少ないことがわかりました。

 

(2) ヘルスリテラシーが高い人ほど、女性特有の症状があったときに対処できる割合が高い。

月経不順や月経困難症など、月経に関するトラブルは約半数の女性に見られましたが、そのうち45%の方は「何もしていない」ことがわかりました。

しかし、ヘルスリテラシーが高い人は、医療機関への受診、市販薬の服用など、具体的で適切な行動をとる傾向があります。

 

(3) 「女性の体に関する知識」とヘルスリテラシーとは強い相関関係がある。

ヘルスリテラシーが高い人に共通している条件として、「女性の体に関する知識」が挙げられます。

月経・妊娠・子宮や卵巣の病気についての正しい知識を持っていると、健康を維持・促進させる能力も高いと言えます。

つまり、女性の体に関する知識を多くの働く女性に伝えることにより、ヘルスリテラシーが高い人が増え、労働生産性の向上に繋がる可能性があります。

 

 

検査結果からみた、今後促進すべき対策

働く女性に対して、女性の体や病気に関する正確な知識をわかりやすく伝えることが、医療従事者の使命であると思います。

書籍や雑誌、インターネットからの情報も大切ですが、直接情報を伝える「企業研修」に産婦人科医も今後は深くかかわっていくべきであると感じました。

 

 

企業や行政、学会など、大きな組織が変革することはもちろん大切ですが、小さな当院のような施設でも「働く女性の健康増進」をサポートできると思います。
そのためには、今後も正しくわかりやすい情報発信を続け、お気軽にご来院、ご相談できるようなクリニックを目指して参ります。