院長コラム

母乳育児により子宮内膜症リスクが低下

2017年アメリカでの研究によると、母乳栄養期間が3ヶ月増えるごとに子宮内膜症のリスクが8%低下し、完全母乳を36ヶ月以上行った女性は、全く母乳影響を行わなかった女性に比べて、子宮内膜症リスクが40%低かった、とのことです。
今回、「Hormone Frontier in Gynecology 2018年6月号」の記事をもとに、母乳育児と子宮内膜症との関連についてお話します。

 

 

母乳育児で子宮内膜症リスクが低下する理由

子宮内膜症は月経血の腹腔内への逆流で発生し、女性ホルモンであるエストロゲンにより増悪するといわれています。
授乳中は月経再開が抑制されるため、無月経となることが多く、エストロゲンも低下します。そのため、授乳中は子宮内膜症のリスクが低下するといわれています。

また、詳細は不明ですが、無月経以外の機序でも内膜症リスクが低下しているといわれています。
つまり、月経の有無や、完全母乳か混合母乳かを問わず、母乳育児中の様々なホルモン環境(血中オキシトシン・プロラクチンが高濃度であるなど)が関連している可能性があります。

ちなみに、母乳育児では、乳がんや卵巣がん、2型糖尿病罹患リスクの減少との関連もいわれていますが、これらも血中ホルモンの変化や長期間無月経との関与が指摘されています。

 

 

子宮内膜症と他の疾患との関連

近年、子宮内膜症と動脈硬化・心血管系疾患を関連付ける研究結果が報告されており、子宮内膜症患者さんは、月経痛・性交痛・骨盤痛・不妊症などの症状だけでなく、心筋梗塞・狭心症・脳梗塞などのリスクも有していることが明らかになっています。

つまり、母乳育児により子宮内膜症のリスクが軽減することは、心筋梗塞・狭心症・脳梗塞などの予防にも繋がります。

 

 

当院では母乳育児をサポートするため、妊娠中から自己乳房マッサージを指導しております。また、母乳外来では堤式母乳マッサージ法研究所の認定者による授乳婦への乳房ケアに力を入れています。
母乳育児は、現在のお母さんと赤ちゃんのためであることはもちろん、お母さんの将来の健康にとっても非常に有意義であるといえます。