院長コラム

新生児聴力スクリーニング検査の意義

先天性難聴は、出生1000人当たり1~2人に発生する比較的頻度の高い疾患です。遺伝的な要因も多いですが、約半数はリスク因子を持たない児に発生しています。そのため、本来であれば新生児全員を対象に新生児聴力スクリーニング検査を行うことが理想ですが、現在わが国では任意の検査になっています。
今回は、新生児聴力スクリーニング検査の意義と当院における検査の流れについて説明します。

 

 

先天性難聴の早期診断・早期介入が重要

言語発育には介入に適した時期があり、それまでの間に適切な療育を受けていなかった場合には、言語発達が阻害されたことによって、認知、社会性、行動、注意力、学習能力などの発達も障害されます。

一方、先天性難聴に対して生後6ヶ月までに療育を開始した場合には、その後の言語能力は改善し、良好なコミュニケーション能力の獲得が期待できます。

つまり、早めに聴力スクリーニング検査を行って先天難聴の児を早期にスクリーニングし、耳鼻科専門医の診察で難聴と診断されたら早期に適切な介入を行う、という一連の流れが大切です。

 

 

当院での新生児聴力スクリーニング検査の流れ

当院では分娩後に新生児聴力スクリーニング検査の有用性について説明し、検査に同意された方に対して検査を行っています。

出生3日目前後にABR法というスクリーニング方法で行っており、2回以上再検が必要と判定された場合は、国立成育医療研究センターや東京医療センターの耳鼻咽喉科へ精査目的でご紹介しております。

 

 

現在、公費補助はなし

アメリカ・イギリス・ドイツ・ロシア・韓国などではほぼ全例にスクリーニングが行われていますが、わが国では検査実施施設は約88%に留まっています。これは公費補助の有無によるものであると思います。残念ながら、東京都あるいは世田谷区での新生児聴力スクリーニング検査補助の予定は今のところありません。
ちなみに当院では、検査料7,500円と設定しております。

 

 

全出生児に実施されている先天性代謝異常検査は公費で行っておりますが、この検査でスクリーニングされる疾患より先天性難聴の方がはるかに高い頻度で認められます。
いずれは自治体の認識も変わり、新生児聴力スクリーニング検査に公費補助が認められることを期待しています。
それまでは自費での検査になります旨、ご了承下さい。