院長コラム

当院における染色体検査の対応

先天性疾患は生まれてくる赤ちゃんの3~5%に認められ、そのうち染色体異常は25%程度と言われています。
先日、国立成育医療研究センター遺伝診療科の先生から、染色体異常に関するご講演があり、いろいろ勉強させて頂きました。
今回は、染色体検査に対する当院での対応について説明します。

 

 

染色体異常とは

ヒトは22対(2本で1対)の常染色体と1対の性染色体(女性はX染色体2本、男性はX染色体とY染色体の2本)から成っています。染色体異常には、染色体の数の異常や形の異常があり、数が1本多く3本になったものをトリソミーといいます。

トリソミーは、母体の加齢とともに頻度が増加します。出生の可能性があるトリソミーは21番目、18番目、13番目に限られ、中でも21トリソミー(ダウン症)が最も多く、染色体異常の半数以上を占めます。

ちなみに21トリソミーは600~800出生に一人、18トリソミーは3,500~8,500出生に一人、13トリソミーは5,000~12,000出生に一人といわれています。

 

 

染色体検査の種類

染色体検査には、大きく非確定検査と確定検査の二種類があります。非確定検査にはNIPT、母体血清マーカー検査(クアトロテストなど)、確定検査には絨毛検査と羊水検査があります。

NIPTは妊娠10週以降に母体血で行いますが、適応になる妊婦さんの条件があり、検査可能な施設も限られています。NIPTをご希望される理由としては、分娩予定日に35歳以上となる年齢要件が最も多く、当院からは国立成育医療研究センター、慶応義塾大学病院、日赤医療センター(セミオープンシステム利用者のみ)の3か所に紹介しています。

また、当院ではクアトロテストを妊娠15週以降に実施することができます。この検査も母体血で行うため、胎児への影響はありません。ただし、クアトロテストで21トリソミーや18トリソミーである確率が基準値よりも高いと判定された場合、NIPT と同様、羊水検査などの確定検査を受けなければ最終的に診断することはできません。

当院では羊水検査を行っていないため、確定検査ご希望の方には、日産玉川病院、東京マザーズクリニックなどに紹介させて頂きます。

 

 

妊婦健診・分娩後に先天性疾患・染色体異常が疑われた場合

当院では、妊婦健診の度に胎児を超音波で確認していますが、特に妊娠20週頃、妊娠30週頃には、より詳しく胎児スクリーニング超音波検査を行っています。超音波検査で胎児の解剖学的異常や発育異常がみられた場合、お母様とご相談の上、精査目的で国立成育医療研究センター胎児診療科などへ紹介させて頂きます。

また、分娩後に先天性疾患・染色体異常が疑われた場合は、緊急性の有無で対応が変わってきます。もし、赤ちゃんの呼吸の状態や循環器の状態が不良の場合は、東京都の新生児搬送システムの利用あるいは、日赤医療センター・国立成育医療研究センター新生児科への依頼などで救急対応します。緊急性はないが、早めの医療介入が望ましい時には国立成育医療研究センター総合診療部、経過観察目的の時は遺伝診療科へ紹介致します。

 

 

当院では、こちらから妊娠中に積極的に染色体検査をお勧めすることはしません。ご本人・ご夫婦の検査希望がある場合や、超音波検査で胎児の精査が望ましいと判断した時に、情報を提供致します。
また、出生後、新生児の染色体異常が疑われた場合は、緊急性がないことを確認した後、ご夫婦同席のもと、できるだけ早い時期に現状や方針についてお伝えするよう心がけています。同時に、高次施設、小児科、行政との連携も進めて参ります。