院長コラム

“口は第2の性器” コンドームで性感染症の予防を

先日の母体保護法指定医研修会では、性感染症について日本家族計画協会の先生からご講演がありました。
今回は、性行動の多様化やSNSの普及による性感染症の拡大、感染者の増加が特に著しい梅毒など、現代の性感染症に関する問題点を共有したいと思います。

 

 

性行動の多様化

通常の腟内性交では性感染症を注意する方でも、口腔性交(フェラチオなど)になると、全くの無防備になる場合も少なくありません。実は口腔内と膣内は組織学的に似ているため、性感染症の中には外陰部・膣内・子宮頚管だけでなく、口唇・口腔内・咽頭部にも感染するものがあります。

性感性症の予防には、コンドームがある程度有効です。腟内性交はもちろん、口腔性交の場合も男性がコンドームを使用することは、女性にとっても男性にとっても、お互いの身を守るために非常に大切です。

ちなみに演者の先生の監修で、「スイートコンドーム」という、フルーティな味のするコンドームが販売されているそうです。このような話題をきっかけに、若いうちから「口腔性交を含め、あらゆる性行為にコンドームは必需品である」という認識を持ってもらう必要があります。

 

 

SNSによる繋がりと性感染症

特定のパートナーとだけ性交する場合に比べて、不特定多数と性交する場合の方が、性感染症が急速に広がりやすいということは明らかです。最近ではSNSを介して見知らぬ男女が出会う機会が増え、避妊や性感染症に関する知識や意識が欠如したまま性行為をしてしまう若者が後を断ちません。

SNSによる出会いは今後ますます増えることが予想され、この流れを食い止めることはできません。社会全体が、「安易に見知らぬ人と性行為をしてはいけない」と言い続けるしかないのでしょうか。

せめて、若い女性に対しては「少なくともコンドームを使用しない男性とはいかなる性行為も行わないこと」、若い男性に対しては「性行為の際は必ずコンドームをつけること、コンドームを持っていないときは性行為を行わないこと」を性教育以前の常識として徹底する必要がありそうです。

 

 

日本での梅毒感染者増加の背景

1492年にコロンブスが新大陸から持ち帰った梅毒は、その後世界中に広まり、20年後の1512年には日本で始めての感染者が大阪で確認されました。ペニシリンの発明以降、急速に感染者は減少しましたが、近年、中国、アメリカ、ヨーロッパをはじめ、世界的に再び増加しています。

日本でも男女ともに感染者が増加していますが、特に15歳から30歳代の女性を中心に急増しています。このことは、男性間よりも異性間の性交による感染が主体になっていることを意味します。

また、海外からの多くの観光客が日本の性サービス業を利用していることが、日本での梅毒感染者増加の要因の一つといわれています。性サービス業自体が法的にグレーゾーンであると思いますが、せめて、すべての性的サービスに対しコンドームを義務付けるといった法的な対応を考えないと、性サービス業の女性から広がる梅毒感染症の連鎖を食い止めることは難しいでしょう。

 

 

多くの観光客で賑わうであろう2020年東京オリンピック・パラリンピックの後、東京の性感染症事情がどのようになるかを考えると、とても恐ろしくなります。
せめて、①妊娠を希望しない場合、すべての性行為はコンドームを使用する、②不特定多数と性行為を行わない、③性サービス業で働かない・客にならない、という3原則を個々が守ることが、性感染症拡大を食い止める条件ではないか、と思っています。