院長コラム

骨盤臓器脱への対応

骨盤臓器脱とは、子宮下垂・脱出、膀胱瘤、直腸瘤などの総称です。
経腟分娩をされた方に多く見られますが、人に相談しにくい病気でもあり、病院を受診せずにお一人で悩まれている方も多いと言われています。
今回は当院での骨盤臓器脱への対応について説明します。

 

 

骨盤臓器脱とは

肛門や尿道のまわりには骨盤底筋という筋肉群があり、子宮や膀胱、腸管などの骨盤内臓器を下からハンモック状に支えています。

この支持する力が、分娩、加齢、ホルモン環境の変化、腹圧などにより低下すると、子宮などの骨盤臓器の下垂や脱出をきたすことがあります。

脱出する臓器により、子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤などに分類されますが、それらが単独ではなく、一緒に認められることもあります。

 

 

骨盤臓器脱の症状

脱出当初は、腟から〝何か〟か出ていて、直接手で触れることで気づきます。

進行すると、排尿または排便困難や、歩行などの日常生活に影響が出ることも少なくありません。

これらの症状は、午前中は軽度でも夕方以降増強することが多いです。

 

 

当院における治療・対処法

1) 骨盤底筋体操

症状が比較的軽い場合は、骨盤底筋訓練のみで軽快することがあります。これは主に、排尿障害や排便障害の際に行われる骨盤底筋を鍛える筋力トレーニングですが、骨盤臓器脱の改善や悪化防止にも効果があります。

2) 漢方薬「補中益気湯」

「補中益気湯」は、子宮下垂に対して保険適応があり、当院ではペッサリー療法と併用することもあります。

3) ペッサリー療法

症状が強い場合や外科的治療を希望しない場合には、ペッサリー療法を行います。

当院ではウォーレス・リング・ペッサリーというポリ塩化ビニル製の柔らかなもの使用しております。

ただし、ペッサリーの刺激による副作用として、腟壁びらん、出血、帯下の増量などがみられるため、約1~6ヶ月ごとに診察し、適宜入れ替えが必要になります。そのような副作用を軽減させるために、女性ホルモン剤の腟錠や内服薬を併用することがあります。

ちなみに、ペッサリーは紀元前400年頃のヒポクラテスの時代から使用されており、約2500年の実績がある治療法です。

 

 

手術療法

ペッサリー療法があまり有効ではない場合、例えばペッサリーが容易に自然脱出してしまうケースや腟壁びらんが強いために性器出血を繰り返すケースには、手術療法が行われます。

手術療法には様々な方法がありますが、少し前まではメッシュを用いた手術(TVM法)、最近では腹腔鏡下または開腹にて、腟壁を仙骨に固定する仙骨腟固定術が主流のようです。

当院では手術ができないため、「昭和大学病院産婦人科」「東邦大学医療センター大橋病院泌尿器科」などへ紹介致します。

 

 

骨盤臓器脱は更年期以上の女性にとって、大変悩ましい病気です。
お一人で悩まずに、是非お気軽にご来院下さい。