院長コラム

月経困難症の治療薬について

下腹部痛・腰痛といった月経痛や、イライラ、落ち込みといった精神症状など、月経時に現れる様々なトラブルを月経困難症と言います。
月経困難症には、子宮筋の過剰な収縮が原因である機能性なものと、子宮内膜症などの病気が原因である器質的なものがあります。
今回は、月経困難症のために婦人科外来を受診された方に、日頃私が説明する薬剤の情報について、共有したいと思います。

鎮痛剤・鎮痙剤
月経痛の主な原因として、子宮筋を収縮させる作用を持つ痛み物質(プロスタグランジン)の存在があります。
月経中あるいは月経前に受診された方には、今回あるいは次回の月経困難症への対処療法が大切であるため、プロスタグランジンの産生を抑える消炎鎮痛剤(NSAIDs:ロキソニン錠など)が第一選択となります。
服用のコツとしては、痛くなってから飲むのではなく、プロスタグランジンが産生される前、つまり月経開始前から服薬し始める事がポイントです。
尚、子宮筋の緊張を和らげる鎮痙剤(ブスコパン錠)も、月経前から服用して頂く事をお勧めします。

女性ホルモン製剤
プロスタグランジンは子宮内膜で合成されるため、子宮内膜組織の増殖を抑えて、プロスタグランジン産生を減少させることが、月経困難症治療の主流になっています。
代表的な女性ホルモン製剤は、低用量ピル(LEP:低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)と黄体ホルモン製剤です。
LEPは1日1回1錠の服用で排卵を抑え、種類によっては120日間連続で服用することで月経様出血を減らす事ができます(ヤーズフレックス配合錠)。
ただし、LEPには頻度は少ないもの(10,000人に3人程度)、血栓症という副作用のリスクがあります。そのため、比較的血栓症リスクの少ないLEP(アリッサ配合錠)を用いる事があります。
また、もともと血栓症リスクが高く、LEPが禁忌の方には、血栓症リスクを上げない黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト錠0.5㎎)を1日2回使用します。
さらに、子宮内膜症、子宮腺筋症といった疾患がある方には、子宮内膜組織の縮小効果が高いディナゲスト錠1.0㎎を1日2回使用することもあります。
尚、月経困難症・過多月経に対しては、高濃度の黄体ホルモンを持続的に子宮内膜のみへ放出することで内膜増殖を抑えるIUS(黄体ホルモン子宮内放出システム:ミレーナ)を子宮内に挿入・留置(最長5年間)することもあります。

漢方薬
漢方薬は血行を改善し子宮筋の緊張をほぐすことで、月経困難症を改善することが期待できます。
虚弱で冷えやむくみがある方には当帰芍薬散、イライラ・抑うつなどの精神症状がみられる方には加味逍遙散、比較的体格がいい方で冷えのぼせがある方には桂枝茯苓丸を使用することがあります。
また、筋肉の緊張をほぐす作用を持つ芍薬甘草湯(こむら返りに有効)を月経開始数日前から開始後数日まで服用して頂くケースもあります。
過多月経もある場合には、止血効果もみられる温清飲を持続的に使用する事もあります。

月経困難症は、生活の質を低下させ、学業や仕事、家事や育児に悪影響を及ぼします。
また、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などの病気が隠れている可能性もあります。
月経痛でお悩みの方は、どの年代であっても我慢せず、早めに婦人科を受診しましょう。