院長コラム

更年期女性の骨粗しょう症予防の食事療法

更年期にエストロゲンが急激に減少すると、骨がどんどん溶けて骨密度が低下し、放置していると骨粗しょう症となってしまう危険性があります。
骨粗しょう症の予防には運動と食事が大切ですが、今回は「女性医学ガイドブック 更年期医療編 2019年度版」(日本女性医学学会編)を参考に、骨粗しょう症予防のための食事について、情報を共有したいと思います。

 

 

① カルシウム

必要量のカルシウムを摂取することは骨粗しょう症の予防・治療の基本であり、骨粗しょう症治療薬の効果を高めるためにも大切な栄養素です。カルシウム摂取量が少量であれば骨折の発生率が高く、カルシウムとビタミンDとの併用により骨折発生率が抑制されたとの報告があります。
我が国のカルシウム摂取の必要量は更年期以降の女性で650mg/日といわれていますが、骨粗しょう症を治療・予防のためには、700~800mg/日の摂取が勧められています。
摂取すべき食品として、牛乳・乳製品、小魚、緑黄色野菜、大豆・大豆製品などが挙げられます。中でも乳製品はカルシウムの吸収率が最も高く、牛乳が飲めない人は料理に利用するといいとのことです。ただし、コレステロール値が高めの方は、低脂肪のものを選ぶようにしましょう。

 

 

② ビタミンD

ビタミンDは小腸および腎臓でのカルシウムおよびリンの吸収を促進する働きがあります。ビタミンDが欠乏すると、カルシウムの吸収が低下し、骨の石灰化障害を起こし、骨密度の低下、骨折の増加へと繋がります。
1日の摂取の目安は8.5μgといわれており、魚類やきのこ類の摂取が推奨されています。

 

 

③ タンパク質

骨を構成する成分はコラーゲンとカルシウムやリンなどの無機物質からなりますが、コラーゲンは蛋白の一種です。従って、蛋白質を肉・魚・卵・豆・穀類などから積極的に摂取することは、骨粗しょう症予防にとって非常に大切です。ちなみに更年期以降の女性の場合、1日50g以上の摂取が推奨されています。

 

 

④ その他必要な栄養素

以上の他にも、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンB群、マグネシウムなども骨粗しょう症の治療・予防には重要であり、大豆・大豆製品、野菜、果物、海藻などをバランスよく摂取することが勧められています。

 

 

⑤ 過剰摂取を避けたい栄養素

反対に、リン、ナトリウム、カフェイン、アルコールは過剰摂取を控えることが望ましく、加工食品、清涼飲料水、保存食品、コーヒー、紅茶、酒類はほどほどにしましょう。

 

 

40歳以上女性の骨粗しょう症の有病率は、腰椎で約20%、大腿骨頚部で25%以上との報告があります。
骨粗しょう症は骨折、寝たきりから死に至る病です。できればエストロゲンが減少する更年期以前から日々の食生活を見直し、骨粗しょう症の予防に心掛けましょう。