院長コラム

思春期女性の低栄養を考える

東京都予防医学協会発行の「よぼう医学 2020年春号」に、思春期女子の低栄養についての記事がありました。
今回は、この記事の内容を中心に、「女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編2016年度版」(日本女性医学学会編)を参考にしながら、思春期の低栄養について考えてみます。

 

 

なぜ不必要なダイエットをしてしまうのか

思春期は、女性としての体をつくる大切な時期です。エストロゲンという女性ホルモンの上昇に伴って、女性の性機能が成長し、骨量が増加しますが、体重や体脂肪も重要な役を担っています。ただし、最近は不必要なダイエットにより、過度に痩せた「不健康なやせ」が増加しており、中学3年で5.5%、高校3年で13.2%と報告されています。

テレビやファッション誌で「スリムな方が美しい」といった誤った認識が広がり、適正体重であるのにも関わらず、美容目的で無理な減量する女子が後を絶ちません。彼女たちのお母様も「美魔女」世代であり、ダイエットに励む母親の姿も影響しているといわれています。

更に、体型や体重が評価に影響するスポーツ(新体操、バレエ、長距離などの陸上競技)に本格的に取り組んでいる女性は、古い考えの指導者から過度な減量を勧められることも少なくないようです。

 

 

思春期女性にとって無理なダイエットは“敵”

無理なダイエットで栄養が低下し低体重になると、エストロゲンの分泌が低下し、排卵が止まり、月経不順や無月経となり、将来的に不妊になってしまう可能性があります。また、骨量はエストロゲンにより増加し、20歳前後でピークを迎えますが、ダイエットによってエストロゲンが減少すると、骨量もあまり増加せず、骨粗しょう症になって簡単に骨折してしまいます。そして、低体重であること自体も、骨量増加を妨げる要因となります。

また、過度なやせ願望は、摂食障害である「神経性無食欲症」といった精神科領域の病気に陥ることがあります。「神経性無食欲症」は若年女性の500人に1人に見られますが、重症化した際の死亡率が6~10%であると報告されており、非常に恐ろしい病気です。

 

 

思春期の食事のポイント

思春期の食事で一番大切なことは、エネルギー源となる主食(炭水化物:ご飯・パン・麺類など)、タンパク質が多い主菜(肉・魚・卵・大豆など)、ビタミン・ミネラルが豊富な副菜(野菜・きのこ・海藻類など)の揃った食事を、1日3食、規則正しく摂取することです。

さらに、骨形成に重要なカルシウムを牛乳、乳製品、大豆製品、小魚などで積極的に摂ることも、特に思春期には重要です。

ちなみに、一日の推定エネルギー必要量は、10~11歳で身体活動レベルが普通の場合は2100kcal
で、高い場合は2350kcal、12~14歳の場合はそれぞれ2400kcalと2700 kcal、15~17歳の場合はそれぞれ2300 kcalと2550 kcalです。

 

 

朝食の欠食、子供1人で食べる孤食も低栄養に繋がります。
「緊急事態宣言」発令中の今、ご自宅でご家族揃ってお食事を召し上がる機会が増えているかもしれません。
是非この機会に、思春期のお嬢さんの食事について、ご家族皆さんで考えてみてはいかがでしょうか。