院長コラム

帯下と外陰部のかゆみが気になる方へ ~カンジダ症とトリコモナス症~

外陰部掻痒や帯下の増量が見られた場合、一般的な細菌性腟炎と下着・パットによるかぶれ(接触皮膚炎)であることが多いですが、カンジダ症やトリコモナス症といった特殊なタイプの炎症であることも少なくありません。
今回、比較的頻繁に遭遇するカンジダ症と、あまり頻繁ではありませんが、完治に苦慮することがあるトリコモナス症について説明します。

 

 

原因

○ カンジダ症

カンジダ菌により炎症が引き起こされる疾患ですが、カンジダ菌自体は皮膚および消化管に広く常在しています。従って、単に腟内にカンジダ菌が存在しているだけでは異常とはいえません。

疲労や抗生剤・ステロイド剤の服用が長期にわたると、免疫力が低下したり、腟内常在菌のバランスが崩れることがあります。すると、腟内のカンジダ菌が増殖し、その結果、外陰部掻痒感や帯下増量といった症状が出現します。これを外陰膣カンジダ症といい、治療対象となります。

 

○ トリコモナス症

トリコモナス原虫による感染で、腟内のグリコーゲンを消費し、腟内の善玉菌を減少させ、他の細菌が増殖しやすい膣内環境を作ります。

トリコモナス腟炎は性交で感染しますが、下着、浴槽、便器などからも感染する可能性があります。また、患者さん自身の子宮頚管に潜んでいて、それが再発の原因になることもあります。

 

 

症状と診断

○ カンジダ腟炎

外陰・腟の掻痒感や帯下の増加が認められることが多く、酒粕様・チーズ様・ヨーグルト様と表現されるような帯下が特徴的で、肉眼的所見だけで診断・治療することも少なくありません。

ただし、あまり特徴的でない帯下であれば、腟培養検査を行なって、確定診断します。

 

○ トリコモナス腟炎

泡沫状の黄色から白色の帯下が特徴で、帯下を顕微鏡で観察し、トリコモナス原虫が見られれば確定診断です。当院ではおもに培養検査で診断しています。

 

治療

○ 外陰膣カンジダ症

抗真菌薬の腟錠と外用剤が外陰膣カンジダ症の治療の柱です。当院では、外来で腟内洗浄した後、「イソコナゾール腟錠」2錠を腟内に挿入し、「フロリードクリーム」を外陰部のかゆい場所に1日数回塗布して頂きます。

 

○ トリコモナス腟炎

腟以外の感染の可能性も考え、メトロニダゾール(フラジール)という抗トリコモナス薬の内服(500mg 分2 10日間)が治療の柱になります。更に、フラジール腟錠を1日1錠10~14日間連日挿入することもあります。

尚、フラジール内服中および終了後3日間は飲酒を避ける必要があります。腹痛、嘔吐、紅潮などの症状をきたすことがありますので、注意しましょう。
また、薬剤の成分が経胎盤的に胎児に移行する可能性があるため、妊婦さんには内服ではなく、10~14日間連日、フラジール腟錠を挿入します。

 

 

カンジダ症とトリコモナス症。
症状は似ていますが、原因や治療法は異なります。
しかし、どちらも免疫力を低下させないことが、予防の第一歩です。

また、バートナーも一緒に治療しないと“ピンポン感染”によってお互い再発しやすくなりますので、その点くれぐれもご注意下さい。