院長コラム

婦人科領域で使用する薬剤とドーピング~使用可能な薬剤~

婦人科疾患に対する治療では、様々なホルモン関連の薬剤を使用することがありますので、アスリートの方はドーピングが気になると思います。
今回は、婦人科領域で頻用する薬剤で、ドーピング禁止薬剤ではなく、使用可能な薬剤について、情報共有したいと思います。

 

 

【使用可能な薬剤】

① 経口避妊薬:OC

経口避妊薬であるトリキュラー、ラベルフィーユなどは使用可能ですので、妊娠を望まない方はむしろ服薬しましょう。

 

② 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬:LEP配合薬

月経困難症や子宮内膜症の治療薬として保険適応があるLEP製剤(ヤーズ配合錠、ヤーズフレックス配合錠、ルナベル配合錠LD/ULD、フリウェル配合錠LD、ジェミーナ配合錠)も使用可能です。月経周期変更したいときにも使用しやすいため、月経痛を認める方には服用をお勧めします。

特に、浮腫やにきびが気になるアスリートの方は、弱い利尿作用を持ち、男性ホルモン様作用がない黄体ホルモン(ドロスピレノン)を含有している「ヤーズ配合錠」、「ヤーズフレックス配合錠」を選択されることが多いようです。もちろん、ドロスプレノンは禁止物質ではありません。

 

③ 中用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬:EP配合薬

月経周期変更や機能性出血・無月経などの治療で使用することが多いEP配合薬(プラノバールなど)も使用可能です。ただし、LEP製剤に比べて、嘔気・むくみなどの副作用が出ることが多く、血栓症のリスクも高まるので、脱水や長距離移動の際は注意が必要です

 

④ 緊急避妊薬

避妊をしていない、または避妊に失敗した性交後72時間以内に服用する緊急避妊薬(ノルレボ錠、レボノルゲストレル錠)は黄体ホルモン(プロゲスチン)製剤であり、使用可能です。避妊に失敗したら、躊躇なく服用して下さい。

 

⑤ エストロゲン製剤

卵巣機能不全、更年期障害、閉経後骨粗鬆症の治療薬として用いることが多いエストロゲン製剤(ジュリナ、プレマリン、エストラーナテープ、ル・エストロジェル、ディビゲル)も使用可能です。また、エストロゲンとプロゲスチンの配合貼付剤であるメノエイドコンビパッチも問題ありません。

 

⑥ プロゲスチン製剤

卵巣機能付線、黄体機能不全などで使用されるプロゲスチン製剤(プロベラ、デュファストン)も使用可能です。

過多月経、月経困難症で用いられるIUS(ミレーナ)は、子宮内膜組織のみに高濃度の黄体ホルモンが作用するため、全身的な副作用はほとんどなく、OC/LEPと異なり血栓症の心配もありません。

子宮内膜症の治療で用いられるディナゲスト錠は長期間連続して服用するケースがほとんどですが、安心して休薬せずに使用して下さい。

 

⑦ GnRHアゴニスト・アンタゴニスト

子宮筋腫、子宮内膜症の治療薬であるGnRHアゴニスト(スプレキュア点鼻薬、リュープロレリン皮下注など)は、使用してしばらくは一過性に男性ホルモンが増加しますが、ほとんど問題にならず女性では使用可能です(男性では禁止薬剤)。

尚、子宮筋腫治療薬として今年認可されたGnRHアンタゴニスト(レルミナ錠)は、2019年6月現在、Global DRO JAPAN(ドーピング薬剤情報のサイト)には掲載されていませんでした。ただし、GnRHアゴニストと作用機序が異なり、男性ホルモンを増加させることはありませんので、恐らく使用可能になると思います。

 

 

今回挙げた薬剤は、治療としてはもちろん、生活の質を向上させるためにも必要な薬剤です。ドーピングを気にして自己判断で服用を中止すると、体調を崩す可能性があります。上記の薬剤は安心して継続して下さい。
詳しい情報をご希望の方は、JADA(Japan Anti-Doping Agency)にお問い合わせ下さい。