院長コラム
麻疹(はしか)の抗体を持たない妊婦さんは気を付けて。
東南アジア渡航歴のある男性が麻疹に感染していた、と世田谷区保健所から連絡がありました。
麻疹の抗体を持っている妊婦さんは心配ありませんが、抗体を持っていない妊婦さんは、人ごみを避けるなどの注意が必要です。
今回は妊娠と麻疹について説明します。
麻疹(はしか)とは
麻疹は麻疹ウイルスにより引き起こされ、発熱・全身倦怠感・感冒症状・全身性の発疹などの症状がみられます。感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染と様々であり、妊婦さんが感染すると、経胎盤感染で胎児へ広がります。
感染力は極めて高く、抗体を持たない方がウイルスに暴露されると、90%以上が感染し、不顕性感染はほとんどありません。
潜伏期間は約10日であり、感染性を有するのは感染後7日目から、発疹が色素沈着に至る第5~6発疹日までです。
つまり、症状が見られる前から感染力があるため、家族間や集団内で感染が拡大しやすいことが特徴です。
妊婦さんへの影響
わが国では、麻疹抗体が陰性である妊婦さんは5~10%といわれています。
また、妊娠していない方と比べて、妊婦さんが感染すると重症化しやすい事が分かっています。
胎児・新生児への影響
妊娠初期に感染した場合の催奇性は否定的ですが、流早産率は30~40%とかなり高くなります。
時に子宮内胎児死亡、早産による低出生体重児が認められます。
分娩前後に感染した場合は、先天性麻疹となる可能性がありますが、成熟児であれば一般に症状は軽度と言われています。
ただし、早産例では重症になる可能性があり、死亡例も報告されています。
麻疹の予防法・治療法
予防はワクチン接種ですが、妊娠中に接種はできません。抗体を持たない妊婦さんは分娩後にワクチン接種をしましょう。
治療は隔離し対処療法となります。安静、栄養補給、補液、切迫流早産管理が中心になります。
日本よりも麻疹患者の報告数が多い国
イタリア、パキスタン、タイ、中国、ニュージーランド、インドネシア、シンガポール、マレーシア、インド、ルーマニアなど。
主にアジア、アフリカ、ヨーロッパ諸国から多く報告されています。
麻疹の抗体を持たない妊婦さんは人ごみを避け、空港には近づかないようにしましょう。
もちろん、国内でも飛行機での移動は最小限にし、海外旅行はしない方が無難です。