院長コラム

閉経近くの子宮筋腫の管理

女性ホルモンの影響で大きくなる子宮筋腫は、閉経以降小さくなることが期待されます。
そのため、閉経前の40代後半以降の方で、子宮筋腫による自覚症状が乏しく、肉腫という悪性の所見がみられない場合は、治療せずに経過観察することがあります。
ただし、過多月経、貧血、下腹部痛、圧迫症状などがみられる場合は、閉経を迎えるまでどのような治療を行うか、患者さんと相談しながら決めていくことも少なくありません。
今回は、当院における閉経近くの子宮筋腫の管理について説明します。

過多月経による貧血がみられる場合
子宮筋腫の大きさや数に限らず、生活に支障をきたすほどの過多月経がみられ、その結果として鉄欠乏性貧血となってしまった方は、早々に薬物療法を始めます。
過多月経に対して「トラネキサム酸錠」などの止血剤、鉄欠乏性貧血に対して「リオナ錠」内服や「モノヴァ」静注などの鉄剤を使用しながら、人工的に閉経状態にする偽閉経療法(レルミナ錠内服など)を行います。
偽閉経療法は、長期間の施行によって骨粗しょう症のリスクが高まるため、6か月間を超えることは控えられています。そこで、偽閉経療法の治療後に、その後の治療方針を改めて検討します。

下腹部痛・圧迫症状が強い巨大筋腫の場合
子宮筋腫の内部組織が変性を起こして痛みを伴う方や、巨大筋腫による圧迫痛・膀胱圧迫による頻尿などの症状がみられる方には、偽閉経療法による効果が少ない場合があります。
また、超音波検査で子宮筋腫の変性が疑われる場合や巨大筋腫の場合、肉腫である可能性も否定できません。
このような場合は、MRI検査で精査しつつ、手術療法を視野に入れて高次施設へ紹介することもあります。

偽閉経療法の効果が不良な場合・偽閉経療法後すぐに増大する場合
一般的に、良性の子宮筋腫は偽閉経療法の効果が表れやすく、悪性の子宮肉腫は偽閉経療法が効きにくい、といわれています。偽閉経療法を4~6か月施行したにも関わらず、筋腫があまり小さくならず、月経様出血もみられる場合は、肉腫の可能性も考えて、高次施設へ紹介します。
また、偽閉経療法による効果は見られるものの、数か月で筋腫増大・過多月経がみられる場合があります。
当院では、50歳以上の方で、骨密度を計測して比較的高い場合は、もう1クール(6か月間)偽閉経療法を行うことがありますが、40歳代の方や、骨密度の低下傾向がみられる方は、偽閉経療法に見切りをつけて、高次施設へ紹介するようにしています。

子宮筋腫は一般的に閉経後に小さくなるため、手術をせずに薬物療法のみで閉経へ“逃げ込む”事も可能な場合があります。
しかし、いつ閉経するかを判定することは困難であり、閉経近くになって過多月経や下腹部痛が更に増悪するケースも少なくありません。
当院では患者さんのお悩みを伺い、検査結果を考慮し、薬物療法の効果をみながら、他施設との医療連携を含めて、患者さんにとって最善と思われる方法を探って参ります。