院長コラム
“過少月経”は、ほっといていいの?
過多月経は日常生活に支障をきたすことがあり、また貧血の原因になることから、外来を受診される方も少なくありません。
一方、過少月経は生活上困らないどころか、むしろ少なくて楽なため異常とは思わず、あまり気にしない方も多いようです。
しかし、過少月経は本当にほっといてもいいのでしょうか。
今回は過少月経について説明します。
過少月経とは
月経は、持続期間が3~7日、経血量は1周期の総経血量20~140ml前後が正常とされています。過少月経とは1周期の経血量が20ml以下をいいますが、実際に経血量を計測して診断することはなく、ご本人の印象で判断されます。
尚、持続期間が2日以内の場合を過短月経といいますが、過短月経は経血量も少ないため、今回は過少月経として扱います。
ホルモン治療による過少月経
避妊目的や月経困難症、子宮内膜症などの治療として、経口避妊薬(OC)、子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS)、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)などを使用していると、子宮内膜が薄くなり、経血量も減少します。あるいは、あたかも無月経になったかのように、全く出血を認めないこともあります。
もちろん、これらの場合はホルモン剤による効果ですので異常ではなく、むしろ過多月経に対する治療となります。
尚、通常はホルモン治療を中止すれば月経が戻ります。
注意が必要な過少月経
一方、注意が必要な過少月経の原因として、主に以下の3つが考えられます。
(1) エストロゲンの分泌低下
子宮内膜は、卵胞から分泌されるエストロゲンによって肥厚します。つまり、エストロゲンの分泌が減少すると子宮内膜も薄くなり、経血量も減少することになります。
エストロゲンの分泌が少ないということは、卵巣機能が低下していることも考えられます。初経から間もない思春期の方や閉経前後の方であれば、生理的なもので心配ありません。しかし、性成熟といわれる18~40歳前後の過少月経の場合、卵巣機能を検査してみることをお勧めします。
これから妊娠を希望される方にとっては、無排卵月経など、不妊の原因が隠れているかどうかを知るきっかけになります。排卵の有無や黄体機能不全など知るため、基礎体温を計るのもいいでしょう。
また、40歳前後で挙児希望がない方の場合は、エストロゲン低下で引き起こされる骨粗鬆症や動脈硬化、認知機能低下などの予防を早めに考えることができます。
(2) 子宮内膜炎
子宮内膜の細菌感染を繰り返した場合や子宮内膜掻爬術・流産手術の回数が多い場合、子宮内膜の一部、あるいはほとんどが癒着してしまうことがあります。すると、正常な子宮内膜の範囲が狭くなり、経血量が減少することになります。
エストロゲンの分泌は正常で排卵しているにも関わらず、毎回過少月経の場合、挙児希望の方は不妊専門医にご相談下さい。
もちろん、現在子宮内膜炎が認められず、挙児希望がなければ、特に治療の必要はありません。
(3) 甲状線機能亢進症
甲状腺機能が亢進すると、凝固に関する働きの一部が活性化されて、止血されやすくなります。その結果、子宮内膜が剥がれてもその直後には止血されるため、経血量は少なくなります。
特に、月経過少以外の甲状線機能亢進症の自覚症状(動悸、発汗、疲労感、いらいらなど)があれば甲状腺専門医を受診され、甲状線機能亢進症がないか、精査して頂くことをお勧めします。
過少月経自体はあまり心配ありませんが、上記のようにホルモン異常や子宮内膜炎などの病気が見つかることがあります。特に挙児希望の方は、不妊症の原因が隠れているかもしれません。
経血量が少ない、あるいは毎回2日間で終わってしまう、という方は、是非一度検査にいらして下さい。