院長コラム

月経困難症の長期治療にあたって

月経中の様々のトラブルを月経困難症といい、原因となる明らかな病気がないものを機能性、子宮内膜症などの疾患が原因であるものを器質性といいます。
機能性月経困難症は比較的若年者に多く、器質性月経困難症は年齢と共に増加します。
また、思春期で月経困難症が強い女性は、将来子宮内膜症になりやすい事が知られています。
つまり、月経困難症とは、思春期~性成熟期~更年期(言い換えれば初経から閉経)の長期間にわたり管理・治療することが必要な病気と言えます。
今回は、薬物療法を長期間続けるためのポイントについて情報共有致します。

鎮痛剤の服用を躊躇しない
月経痛の原因物質であるプロスタグランジンは子宮内膜で合成され、その分泌が多過ぎると子宮を過剰に収縮させることになります。
ロキソニンなどの消炎鎮痛剤は、そのようなプロスタグランジンの合成を阻害する働きがあります。
したがって、プロスタグランジンの合成が少ないうちに、つまり月経痛が軽いうちに、できれば月経が始まる前から消炎鎮痛剤を服用して頂く事がとても有用です。その結果、消炎鎮痛剤の合計服薬量が少なくなることも期待できます。
痛みを我慢すればするほど、痛みに対して過敏となり、痛みに弱くなると言われています。月経困難症は長期間の治療が必要であるからこそ、痛みを我慢せず、消炎鎮痛剤を積極的かつ適切に服用しましょう。

毎日飲む薬剤は習慣化する
漢方薬は食前(食事30分前まで)、食間(食後2時間)に服用することが多いですが、飲み忘れてしまう方も少なくありません。特に一日3回服用の場合、仕事や学校のため、昼の服薬ができない場合もあります。漢方薬の種類によっては、一日2回服用のタイプもあるため、是非処方医とご相談下さい。
また、偽閉経療法で用いる「レルミナ錠」の場合は食前が基本です。そのため「レルミナ錠服薬後は、30分程度好きなこと(ドラマ鑑賞・読書・エクササイズなど)をしてから食事をする」といった活動の流れをルーチンワークにすると服薬が習慣化するかもしれません。
低用量ピル(一日1回)や黄体ホルモン製剤(一日2回)は、食事との関連はあまりありませんので、起床時、洗面時、就寝時など、毎日同じ時間で行っている行動と組み合わせて服薬してもいいでしょう。

月経困難症の薬物療法は長期にわたるため、ご年齢や環境の変化に応じて、治療内容が切り替わっていくことも珍しくありません。
治療薬の変更に伴い、患者さんご自身がその薬剤の働きや副作用をある程度理解しておくことが大切です。
そのためには、治療開始時・変更時はもちろん、治療途中であっても不明な点があれば、遠慮せずに主治医に尋ねるようにしましょう。