院長コラム

子宮頚がんの一次予防と二次予防

近年わが国でも、少しずつ子宮癌頚がん検診の受診率が上昇していますが、いまだ40%程度に留まっており、目標の50%に届いていないのが現状です。
東京都予防医学協会が発行する「よぼう医学 秋号」に、若い世代の子宮頚がん検診受診率アップを目指した特集が組まれていました。
今回は、その中で特に興味深い記事を中心にお伝えします。

 

 

子宮頚がんは“予防可能”ながん

子宮頚がんは、発がん性が高いタイプのヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が原因です。多くの場合は、HPVに感染しても免疫反応により自然にウイルスは排除されますが、排除されずに感染状態が持続すると、軽度異型性、中等度異形成を経て、前がん病変である高度異形成、0期のがんである上皮内がん、そして浸潤がんへと進行していきます。

 

 

一次予防:HPVワクチンで感染を阻止

一次予防として、HPVに対する抗体を作るためのHPVワクチンがあります。わが国では2種類のワクチンが承認されており、予防効果は60~70%とされています。現在、厚生労働省の積極的勧奨が差し控えられていますが、セクシャルデビュー前の女性には、是非接種して頂きたいと願っています。

ちなみに、HPVワクチンが導入されて10年以上になるアメリカでは、その間のHPV感染は、14-19歳女性では64%、20-24歳女性では34%減少したとの報告があります。

 

 

二次予防:がん検診で早期発見

子宮頚がん検診では、異形成やがんが発生しやすい場所の細胞を細かいブラシなどで採取して調べます。がんはもちろん、前段階の異形成を発見することで、がんへの進展を防ぐ事が期待できます。

細胞診は子宮頚がん死亡率減少効果が実証されている検査方法です。しかし、欧米では70~80%以上、オーストラリアや韓国では55%以上の受診率であるのに対し、わが国では42%に留まっています。性交経験の有る20歳以上の女性は、せめて2年に1回は検診されることをお勧めします。

 

 

子宮頚がん検診受診率アップに向けての若い世代からの提言

「よぼう医学」に女子大学生の意見・提案が掲載されていましたので、いくつか紹介します。

Q1 なぜ、受診しようという気にならないのか?

・ 恥ずかしい、怖い。
・ 産婦人科を受診することに抵抗がある。
・ 母親も受けていないので、受けなくても大丈夫だと思った。

Q2 どうしたら受けやすくなるか?

・ 友達や母親と一緒に受診できたら安心。
・ 若い人がたくさん来る病院だとわかれば行きやすいと思う。
・ 肌年齢チェックなど、楽しめるものや特典があるといい。

Q3 受診しやすくするために何が必要か?

・ 高校卒業前に子宮頚がん検診の重要性を教える機会を作る。
・ CMなどで受診者の体験談などを流す。
・ 女性が行きやすい場所であることをもっとPRする。

その他多くのご意見・ご提言があり、とても参考になります。
お一人で受診しづらい方は、お友達やお母様とお誘い合わせの上、是非お気軽に頚がん検診にいらして下さい。

 

 

当院での取り組みとして、受診された10代の方やそのお母様に対して、HPVワクチンの重要性についてお話しております。
また、20歳以上の性交経験のある方には、子宮頚がん検診(世田谷区検診など)をお勧めしています。
現在、コラムなどでも子宮頚がん予防について情報発信を行っていますが、前述の若者の提言などを参考にし、今後は新しい形で啓発活動ができればと考えています。