院長コラム

妊娠糖尿病の検査について

妊娠の経過に伴い、血糖をコントロールするインスリンというホルモンの働きが低下し、糖尿病を発症しやすくなります。

もし、妊娠中期以降の糖尿病が十分に管理されないと、胎児発育不全、子宮内胎児死亡、巨大児による肩甲難産、新生児低血糖や呼吸障害など、母児に重大な影響が及びます。そのため、妊婦初期から糖尿病の検査が重要になります。

今回は、当院における妊娠中の血糖に関する検査について説明します。

 

妊娠初期のスクリーニング

通常、妊娠中の糖尿病に関するスクリーニング検査は二段階で行います。
当院では1回目のスクリーニング検査として、妊娠9週前後に貧血、感染症、血液型とともに随時血糖(食後2~4時間)を検査します。

 

妊娠後期のスクリーニング

2回目のスクリーングは妊娠24週頃に50gGCT(グルコースチャレンジテスト)を行います。これは、50gブドウ糖が入った検査用サイダーを飲み、1時間後の血糖を調べます。140mg/dl以上を陽性と判断し、陽性の場合は次の精密検査を行います。

 

妊娠糖尿病診断のための精密検査

第一段階または第二段階で基準値を上回った場合、75gOGTTという精査に移ります。この検査では、何も召し上がらずに9時頃受診頂きます。そして、「空腹時の血糖値」、「75g糖水摂取一時間後の血糖値」、「二時間後の血糖値」の合わせて3回血糖値を測定します。基準値はそれぞれ92mg/dl、180mg /dl および153 mg/dlであり、1回でも基準値を上回れば妊娠糖尿病と判定されます。

 

妊娠糖尿病と診断されたら

妊娠糖尿病と診断された場合、更に精査と厳重な管理が必要になります。ただし、当院での管理は困難であるため、原則として、国立病院機構東京医療センター産婦人科へ紹介させて頂きます。もし、帰省分娩ご希望の場合には、早めに帰省先にお戻り頂きます。

厳格な栄養指導のみで血糖がコントロールできる場合もありますが、インスリン治療が必要なケースもあります。いずれの場合も、妊娠中だけでなく、分娩後のお母さんも経過観察が必要であり、もちろん生まれた赤ちゃんも新生児科の先生に診察して頂くことになります。

 

今まで健康診断などの血糖や尿糖の検査で、一度も異常と言われたことがない方でも、妊娠糖尿病になってしまうことがあります。
もし、妊娠糖尿病と診断されたら、紹介状をお書きしますので、母児のために専門医の診察を受けましょう。