院長コラム
妊娠に向けて ~妊活の体作り~
健やかな胎児の成長や母体の健康は、妊娠が成立する前の生活習慣なども関係しています。そのため、妊娠を考えた時点で、ご自身の生活を見直す必要があります。
今回は、妊活としての体作りについて説明します。
1. 栄養バランスのとれた食事
20~40代の日本人女性の80%以上は厚生労働省が推奨する「1日350g以上」の緑黄色野菜が摂取できていません。各種ビタミンだけでなく、鉄、カルシウムなどのミネラル、炭水化物、タンパク質なども足りていない女性も少なくないようです。
妊娠する前から、主食、主菜、副菜を毎食とるように心がけて、各栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
2. サプリメントを上手に活用
栄養素の摂取の基本は、バランスのとれた食事であることに間違いはありません。ただし、どうしても不足しがちな栄養素、特に葉酸・鉄・カルシウムは葉酸サプリメントあるいはマルチビタミンサプリメントで補うようにしましょう。ただし、妊娠初期にビタミンAを大量に摂取すると胎児に影響を及ぼすことがあるため、ビタミンAが入っていないサプリメントを服用することが無難です。
また、葉酸は胎児の神経管閉鎖障害の発症を防ぐために重要なビタミンB群の一種ですが、妊娠する1か月以上前から食事からの摂取に加えて1日0.4mg以上摂取することが必要です。
ちなみに、当院では葉酸だけのサプリメントと葉酸・鉄・カルシウムなど18種類のビタミンとミネラル(ビタミンAは含まれていません)のマルチサプリメントの二種類をご用意しておりますので、受付でご相談下さい。
3. 適正体重を維持
適正体重の使用であるBMIは以下で計算できます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
BMI:22が標準とされており、18.5以上、25.0未満が適正体重といわれています。
18.5未満のやせ女性の場合は切迫流産、早産、低出生体重児のリスクが高くなる傾向があり、17.5未満の女性は体重減少性無月経となり、そもそも無排卵で妊娠が困難になります。
BMIが25以上の肥満妊婦さんは、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、難産、帝王切開後の肺塞栓症など、様々な母体合併症をきたす可能性があります。
BMIが適正体重からはずれてしまっている女性の方は、急激な体重の増減は望ましくないので、一か月に1kgの増減を目安にして、数ヶ月から数年の単位で目標設定されるのがいいでしょう。そのためには、適切な食事と運動習慣を心がけることが大切です。
4. 妊娠前から喫煙は厳禁、パートナーも禁煙
たばこが様々な健康被害の原因であることは自明ですが、妊娠率を下げ、流産率や異所性妊娠(子宮外妊娠)の確率を高めるともいわれています。また、妊娠してからの喫煙では胎児の様々な先天異常、胎児発育不全、乳幼児突然死症候群など、多くの異常が増えるといわれています。
喫煙が習慣になっていると、禁煙することは困難になります。初めから吸わないことが理想ですが、せめて妊娠を考えた時点で禁煙外来を受診するなど、禁煙に向けて行動しましょう。
尚、受動喫煙の問題もありますので、パートナーや同居しているご家族などにも、是非禁煙して頂くようにお伝え下さい。
5. ワクチン接種で抗体を獲得
妊娠20週までの妊婦さんが、初めて風疹に感染してしまうと、胎児に感染し先天性風疹症候群(白内障・心疾患・難聴)などを引き起こす可能性があります。
また、妊娠期間通じて麻疹(はしか)に初めて感染すると、流早産や胎児発育不全、胎児死亡、新生児感染の可能性が高まり、
風疹、麻疹を予防するためにはワクチンが有効ですが、妊娠中に接種することはできません。そのため、妊娠する前に麻疹風疹ワクチンの接種を終わらせておきましょう。
他にも、身体的・精神的な持病をお持ちの女性は、それぞれの疾患について、妊娠しても大丈夫な状態であるのか等、主治医の先生にご相談してみましょう。
当院では「ブライダル検査」といって、妊娠前に調べておきたい項目を検査しています。是非、ご相談下さい。