院長コラム

便秘気味の妊婦さんへ ~下剤を飲む前に~

便秘に悩んでいる妊婦さんは少なくありません。そもそも便秘とは、3日以上排便がなく、便通異常に伴う症状(腹痛、排便困難、腹部膨満感など)を認める状態をいいます。妊娠中は子宮が増大して腸管を圧迫し、ホルモンの影響により腸管の動きが抑制されます。そのため、妊娠前から慢性的な便秘である方はもちろん、日頃は排便異常を認めない方でも、便秘に悩む妊婦さんは数多くいらっしゃいます。

 

まずは生活習慣改善を

便秘を解消するためには、生活習慣を見直すことが大切です。朝食をしっかりとり、こまめに水分も補給すると、腸の働きが活性化されて排便しやすくなります。朝食後にトイレに行く習慣をつけることが、便秘解消のポイントになります。食事の内容としては野菜、果物、海藻、こんにゃくなど食物線維が豊富な食材をとり入れるといいでしょう。ただし、中には高カロリーなものもありますので、食材選びと摂取量には注意して下さい。

 

軽い運動も有効

そのほか、散歩などの適度な運動も効果的です。もし、切迫症状などの異常がなければ、マタニティービクス、マタニティースウィミング、マタニティーヨガなどに参加することもいいでしょう。院でのマタニティーヨガにも、是非ご参加下さい。

また、お仕事をされている方は、精神的ストレス、排便を我慢しないといけない環境、長時間の同じ姿勢など、便秘を悪化させる条件が多いので、特に注意が必要です。

 

下剤の使い方

このような生活習慣の改善でも効果がない便秘に対しては下剤を用います。様々な下剤のうち、酸化マグネシウム(「マグラックス」など)が第1選択薬となります。
この薬剤は腸内の水分を著明に増加させ、結果的に腸蠕動が促進されて排便に至ります。習慣性がなく、長期連用が可能であることもこの薬剤の特徴のひとつです。コロコロした便が少量しか出ない方や、便が硬い方にとっては非常に効果的です。

また、「ラキソベロン」、「アローゼン」など、大腸刺激性下剤が用いられることもあります。これらは、多量の服用によって子宮収縮を誘発する恐れもあるため、使用にあったては注意が必要です。

その他、大黄を含む漢方薬も、その多量投与により切迫流早産を引き起こすことがあるため、通常の便秘であれば妊婦さんは服用しない方が無難でしょう。

もし、直腸に便がたまっている状態であれば「レシカルボン坐薬」が有効であり、あるいは子宮収縮に注意しながらグリセリン浣腸を行うこともあります。 
 
尚、いきみ過ぎると子宮収縮の誘発や痔核の悪化などの可能性があるため、あまりいきまない様にしましょう。
 

妊娠中の便通コントロールは非常に大切です。

食生活・運動習慣などの生活習慣を見直し、下剤を上手に活用しましょう。