院長コラム
主に精神症状に用いられる漢方薬
月経前症候群、産後うつ、更年期障害など、精神症状を呈する女性は少なくありません。また、一口に精神症状といっても抑うつ、不安感、いらいらなど多岐にわたります。このような精神症状が主体の方には漢方療法を行なうことが多く、今回は頻用される薬剤について説明します。
○加味帰脾湯:カミキヒトウ
虚弱体質で血色が悪い女性の貧血、不眠症、精神不安、神経症に用います。
精神症状の中でも特に抑うつ・無力感が強い方が適応で、易疲労、胃腸虚弱、不眠、寝汗の改善も期待できます。
○加味逍遥散:カミショウヨウサン
体質が虚弱な女性で、肩がこり、疲れやすく、精神神経症状、特に不安感・緊張と興奮・焦燥がみられる方に用います。
また、訴えが多岐にわたり、とりとめがなく、抑うつの裏に攻撃性を秘めたタイプがよい適応になります。
その他、上半身の熱さ、ほてり、発汗、手足の冷えにも効果が期待できます。
○桂枝加竜骨牡蛎湯:ケイシカリュウコツボレイトウ
性格的に他人と打ち解けるのが苦手な方で、体質虚弱、やせて顔色悪く、神経過敏や精神不安を訴える方に処方します。
また、のぼせ、めまい、抜け毛、発汗、動悸、手足の冷えなどに効果が期待できます。
ある漢方医のお話では、「現実感がない」「幽体離脱しているみたい」「仕事中眠くなる」といった方に有効とのことです。
○柴胡加竜骨牡蠣湯:サイコカリュウコツボレイトウ
比較的体力があり、不安感・緊張が強く、抑うつ・無力感や興奮・焦燥もみられる方が適応です。
また、不眠、のぼせ、めまい、神経過敏、便秘、手のひらの発汗などにも効果が期待できます。
また、「驚きやすい」「夢をよくみる」「うわごとを言う」といった方もいい適応になるとの事です。
○ 抑肝散または抑肝散加陳皮半夏:ヨクカンサン・ヨクカンサンカチンピハンゲ
虚弱な体質で神経が高ぶる方、多忙のあまり物や人にあたるような攻撃性を有する方、イライラが強すぎて抑うつとなってしまった方などが対象です。
脳の過度の興奮によるめまい、頭痛、けいれんを改善させ、いらいら、不眠に対して効果を発揮します。
ある漢方医のお話では、性格的に他人と打ち解けることが苦手で、対人関係(特に親しい人との関係)のストレスを抱えている方に効果があるそうです。
○ 半夏厚朴湯:ハンゲコウボクトウ
体力的には中等度以下で、気分がふさぎ、咽頭部の異物感がある場合、適応になります。
不安神経症、神経性胃炎だけでなく、つわりにも効果的で、「酸素が胸に入らないように感じる」といったパニック症状の緩和も期待できます。
○ 女神散:ニョシンサン
体力的には中等度以上で、不安、動悸、不眠などの多彩な精神症状を訴える方が適応です。特に性周期に伴う症状や産前産後の症状に用いることが多く、期待と不安の狭間で気持ちが上下に強く揺さぶられる時のストレスに有効であるといわれています。
今回説明した漢方薬はほんの一部です。
体格や体質、症状に合わせて薬剤を選択し、必要に応じて他剤(漢方薬だけでなくホルモン剤や向精神薬など)を併用することも少なくありません。
また、薬物療法による症状の変化に合わせて、処方薬もその都度検討しております。
最善の治療ため、少しでも気になる症状がございましたら、ご遠慮なくお知らせ下さい。