ホルモン補充療法と子宮体がんとの関連|世田谷区の産科・婦人科「冬城産婦人科医院」

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院長コラム

ホルモン補充療法と子宮体がんとの関連

子宮を有する女性に対して、エストロゲンという女性ホルモンのみを投与すると子宮体がんのリスクが上昇することが知られています。また、子宮体がんの術後の卵巣欠落症状(更年期障害)に対して、ホルモン補充療法(HRT)はほとんど行なわれていないのが現状です。
今回、「ホルモン補充療法ガイドライン 2017年度版」(日本産科婦人科学会・日本女性医学学会編)、「女性医学ガイドブック 更年期医療編 2019年度版」(日本女性医学学会編)を基に、HRTと子宮体がんとの関連について説明します。

 

 

HRTの禁忌症例と慎重投与症例

いくつかある禁忌症例の中に「現在の子宮内膜癌(子宮体がんのこと)」があります。また、慎重投与ないしは条件付きで投与が可能な症例には「子宮内膜癌の既往」が含まれています。
つまり、現在子宮体がんの方にはHRTはできませんが、治療後であれば条件などによってHRTが可能かもれない、ということです。
ちなみに、HRT施行前に子宮内膜細胞診または組織診で異常がないことを確認することが推奨されていますが、病理学的検査が困難な場合、超音波検査で5mm以上の子宮内膜の厚さが見られた時には子宮体がんの可能性が否定できないため、一旦HRTは見送り、精査を行なうことにしています。

 

 

子宮体がんのリスクを上昇させないHRTの方法

更年期障害や閉経後骨粗鬆症に対する治療なら、エストロゲンのみの補充療法(ERT)で十分です。現に、子宮を有していない方に対してはERTを行なっていいます。しかし、子宮を有している方にERTを行なうと、子宮体がんのリスクが上昇するため、子宮内膜組織の増殖を抑える作用にある黄体ホルモンを併用する必要があります。
また、周期的併用療法(黄体ホルモン製剤とエストロゲン製剤の併用期間が12日前後、それ以外の期間はエストロゲン製剤のみ、あるいは両製剤休薬)より持続的併用療法(連続した黄体ホルモン製剤とエストロゲン製剤との併用)の方が子宮体がん発症リスクは低いといわれています。

 

 

子宮体がん術後の方にHRTは可能か

子宮体がん手術では両側卵巣を摘出することが多いですが、閉経前の女性の場合、自然閉経よりも外科的閉経の方が、更年期障害などの症状の程度が重いといわれています。したがって、このような方に対してはHRTが望ましいと思いますが、再発の可能性を考えると躊躇してしまいます。
HRTと子宮体がんの再発リスクに関する研究は数が少なく、HRT開始のタイミングや投与期間についてコンセンサスが得られていないのが現状です。ただし、現時点までの研究では、子宮体がん進行期分類で初期であればHRTにより再発のリスクは上がらない、と報告されているため、HRTの強いご希望がある患者さんに限り、慎重に投与することが現実的かもしれません。

 

 

当院では、子宮を有する方に対するHRTの投与方法は、年齢を問わず持続的併用療法を選択しています。
子宮体がん治療後の更年期障害に対する治療として、漢方療法あるいは自律神経調整薬、抗うつ薬などを第一選択とし、必要に応じてプラセンタ注射(メルスモン:エストロゲンは含まれていません)を行ないます。
それでも、症状が改善されない場合は、健康補助食品であるエクオール(エクエル:大豆イソフラボンで子宮内膜組織の増殖を抑制する効果を有しています)をお勧めします。
もし、どうしてもHRTをご希望される方の場合は、子宮体がんの手術進行期分類がⅠ期(癌が子宮体部に限局するもの)、Ⅱ期(癌が頚部間質に浸潤するが、子宮を越えていないもの)に限定したいと思いますが、手術をされた主治医の先生の方針を最優先に考えています。

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