院長コラム

40歳代以上の女性は脂質異常症の予防・治療のため、今すぐ生活習慣の見直しを

動脈硬化性疾患を予防するためには、脂質異常症の管理が欠かせません。中でも、いかに生活習慣を改善するかが最大のポイントです。
今回は、「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編集・監修)、「産科と婦人科 2019年12月号:オフィスギネコロジーにおける脂質管理」(診断と治療社)を参考に、閉経期女性の脂質異常症の管理について、生活習慣の観点から情報を共有します。

 

 

生活習慣の改善

生活習慣を見直す基準として、以下の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」のリストを参考にしてみてはいかがでしょうか。

「動脈硬化性疾患予防のための生活習慣の改善」
1. 禁煙し、受動喫煙を回避する
2. 過食を抑え、標準体重を維持する。
3. 肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑え、魚類、大豆製品の摂取を増やす。
4. 野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取を増やす。
5. 食塩を多く含む食品の摂取を控える。
6. アルコールの過剰摂取を控える。
7. 有酸素運動を毎日30分以上行なう。

 

 

禁煙・受動喫煙回避は基本

生活習慣の中でも喫煙は、すべての動脈硬化性疾患の危険因子です。ある報告によると、喫煙者は非喫煙者と比較してHDLコレステロール(善玉)が低く、LDLコレステロール(悪玉)・中性脂肪が高いとの事です。そして禁煙をすれば、HDLコレステロールが上昇し、LDLコレステロールが減少するといわれています。したがって、現在喫煙される方は、禁煙することが生活習慣改善の第一歩となります。

また、受動喫煙でもHDLコレステロールが低く、LDLコレステロールが高くなるそうですので、可能な限り受動喫煙を避けるようにしましょう。

 

 

食生活の改善ポイント

食生活の改善を考えるにあたり、エネルギー摂取量と身体活動量を考慮して、標準体重(身長《m》x身長《m》x22)を維持するよう心掛けましょう。

摂取する脂肪の質を考え、動物性脂肪の飽和脂肪酸を減らし、魚類中のn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やすようにします。

また、炭水化物エネルギー比率を50~60%とし、食物線維の摂取を増やし、食塩の摂取は6g/日未満を目標にしましょう。

さらに、アルコールの摂取を25g/日以下に抑えることも動脈硬化性疾患の予防の有用です。ちなみに、ビール中ビン(500ml)なら1本、日本酒なら1合、焼酎なら0.5合、ウイスキーならシングル2杯(60ml)、ワインなら2杯(240ml)のようです。

 

 

運動習慣の目安

運動には、ウォーキング・サイクリング・水泳などの有酸素運動とスクワット・ダンベル体操など筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動がありますが、両者を併用することが効果的とのことです。

運動強度は中強度(自覚:楽である~ややきつい)で、頻度は1日30分以上(できれば毎日)、週180分以上が勧められています。

ちなみに、脂質代謝の促進は運動開始後30分後から表れ、その後12~24時間持続し、その間に摂取した脂肪酸が有効に利用されるとの事です。

 

 

健康診断で脂質異常症と診断された方はもちろん、健康診断で異常がなかった方も、LDLコレステロールが上昇し始める40歳代からは生活習慣を見直し、できるところから改善していきましょう。