院長コラム

2月4日は「風疹の日」~風疹ゼロを目指すために~

日本産婦人科医会は厚生労働省支援のもと、オリンピック・パラリンピック開催の2020年までに風疹をゼロにすることを目標に、「“風疹ゼロ”プロジェクト」を2017年に立ち上げて様々な活動を行なっています。そして、いよいよ今年が目標としていたオリンピックイヤー。
今回は、「妊娠と風疹」について説明します。

 

 

風疹と先天性風疹症候群

風疹とは風疹ウイルスによる感染症で、ほとんどは唾液などからの飛沫感染で広がります。通常、約2~3週間の潜伏期間を経て発疹、発熱、リンパ節腫張、関節痛などの症状が認められますが、不顕性感染(感染していても症状が現れない状態)の方も少なくありません。

妊婦さんが妊娠初期に風疹ウイルスに感染した場合はおなかにいる赤ちゃんにも感染し、様々な症状をきたす事があります。これを先天性風疹症候群といい、難聴、心疾患、白内障・緑内障、精神・身体発達の遅れなどを認めることがあります。先天性風疹症候群リスクは感染時の妊娠週数が進むにつれ減少します。妊娠4~6週では100%、7~12週で80%、13~16週で50%、17~20週で6%、20週以降では0%と言われています。

風疹の抗体をもっていない妊婦さんはもちろん、風疹の感染既往やワクチン接種歴がある方であっても、風疹に対する免疫力が弱い方(HI抗体価が16倍以下の方)の場合は感染する可能性があるため、少なくとも妊娠20週頃までは人混みを避けるようにしましょう。

 

 

風疹ワクチンについて

風疹の予防にはワクチンが非常に有用ですが、風疹ワクチンまたは麻疹風疹混合(MR)ワクチンは生ワクチンであるため、妊娠中に接種することはできません。また、これらのワクチンを接種後は2か月以上妊娠を避ける必要があります。

抗体陰性または低抗体価の妊婦さんを風疹から守るためには、妊婦さん以外の方も抗体を身につけ、風疹にかからないようにすることが大切です。今までに明らかに風疹にかかったことがある方、または予防接種を受けたことがある方を除き、すべての方が抗体価を調べ、抗体陰性または低抗体価の方はワクチンを接種することが望まれます。

 

 

風疹流行防止の鍵は“40~50代の男性”

1962(昭和37)年4月2日~1979(昭和54)年4月1日生まれの男性、1962(昭和37)年4月1日以前生まれの男女は、風疹の定期接種の機会がありませんでしたので、抗体をもっていない、あるいは抗体価が低い可能性があります。我が国で風疹がなくならないのは、予防接種を受けたことがなく、抗体をもたない40~50代の男性の存在が大きいと考えられます。

国の政策として、1962(昭和37)年4月2日~1979(昭和54)年4月1日生まれの男性に対して風疹抗体検査無料クーポン券が送られているはずですが、実施率はわずか15%との事です。もし、ご主人をはじめ、ご家族に40~50代の男性がいらっしゃいましたら、是非抗体検査を受けられたかどうかをご確認頂き、まだであれば是非検査して頂く旨、お伝え下さい。

 

 

40~50代前後の男性に風疹への関心を持って頂き、積極的に抗体検査を受けて頂くことが、「風疹ゼロ」への出発点であると考えます。
妊婦さんを風疹から守り、先天性風疹症候群の発生を防ぐために、みんなで協力し合いましょう。