院長コラム
子宮内膜症に対する黄体ホルモン療法による不正出血
黄体ホルモンは子宮内膜組織の増殖を抑制する働きがあるため、子宮内膜症の治療薬として黄体ホルモン製剤を用いることがあります。中でも「ディナゲスト錠」は効果が高く、広く用いられていますが、副作用として不正出血をきたすことが少なくありません。
今回は、持田製薬の説明資料などを参考に、「ディナゲスト錠」による不正出血について説明します。
出血の症状
黄体ホルモンはエストロゲンの上昇を抑える作用があります。エストロゲンには子宮内膜を厚くさせる作用があるため、黄体ホルモン剤を単独で投与すると、エストロゲンは上昇せず、子宮内膜もあまり厚くなりません。中途半端に薄い内膜は剥がれやすいため、不正出血をきたしやすくなります。
出血の程度は様々ですが、目安として以下の4つに分けます。
○軽度:整理の終わりかけの頃の出血
ナプキンを付けるほど出ない出血
○中等度:ナプキンを付けていないと心配なくらいの出血
○高度:生理の2日目のような出血
○重症:夜用ナプキンが2~3時間でグッショリするような出血
軽度・中等度(10日以内)・高度(2~3日以内)の場合はしばらく様子をみて構いませんが、中等度(10日以上)・高度(4日以上)・重症の場合は、かかりつけ医を受診することが勧められています。
出血に対する治療
黄体ホルモン単剤で内膜を薄くしていることが出血の原因であるため、中用量のエストロゲンと黄体ホルモンの合剤(プラノバール錠など)を7日間程度あるいは止血するまで投与し、子宮内膜を厚くさせて安定化させます。服用後7日間ほど休薬すると、子宮内膜が月経のように剥がれて出血することでリセットされます。その後、再びディナゲスト単剤に復帰します。尚、エストロゲンには止血効果もありますが、ホルモン剤に加えて止血剤「トランサミン錠」を止血するまで併用する場合もあります。
ディナゲスト錠による出血を予防するために
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)や偽閉経療法(リュープロレリン皮下注)を4~6か月投与し、子宮内膜をあらかじめ薄くしてからディナゲスト錠に移行すると、不正出血の出血量を減少させるとの報告があります。当院では比較的若年の方にはLEP,更年期近くの方には偽閉経療法を「ディナゲスト錠」に先行して投与することがあります
子宮内膜症の治療薬「ディナゲスト錠」は、幅広い年代で使用でき、とても有用な薬剤です。不正出血をコントロールできれば、長期にわたって服用が可能です。
もし、「ディナゲスト錠」服用中に不正出血が増え、動悸・疲労感・息切れなどの貧血症状がみられましたら、早めに受診して下さい。