院長コラム

10~20代女性に蔓延る性感染症

性行為によって感染・伝播しうる感染症を性感染症といい、性器クラミジア感染症・淋菌感染症・性器ヘルペス・尖圭コンジローマ・梅毒・HIV感染症といった代表的な性感染症は、わが国ではすべて増加傾向にあります。
今回は、特に増加が激しい10~20代の性感染症についてお話します。

 

 

女子高生の約4人に1人が性交経験者

2011年の調査によると、男子高校生の性交経験率は15.0%、女子は23.6%といわれており、大学生になると男子54.4%、女子46.8%と増加します。

しかし、性感染症予防にある程度の効果が期待できるコンドームについては、高校生の約半数、大学生の35%が、必ずしも毎回使用しているとは限らない、とのことです。

もちろん、コンドームだけで性感染症を100%予防できるとはいえませんが、コンドームを着けずに複数の相手と性行為を持つことが、若年者に性感染症が蔓延している原因の一つといえるでしょう。

 

 

性風俗産業と性感染症

条例の効果などにより、店舗型の性風俗店は減少しているようですが、無店舗型のお店は反対に激増しているとのことです。

また、全国の20代女性の20人に1人は性風俗産業に従事している、ともいわれており、当然、東京などの都会ではその割合は高いことが予想され、彼女たちが性感染症の感染源になっている可能性も否定できません。

海外では、性風俗店従事者には性感染症の検査が義務付けられている国もあるようです。わが国も、性感染症増加という現実を考えると、保健行政として何らかの対策を講じる必要があるかもしれません。

 

 

10代に広がる性器クラミジア

わが国では、性感染症の中でも性器クラミジアが最も多く、しかも自覚症状がないケースも少なくありません。したがって、気付かないうちに感染が広がりやすいという特徴があります。

ある調査では、男子高校生の約7%、女子高校生の約13%が性器クラミジアに感染しているとの報告もあります。特に女子の場合は、中学生の時に初体験した人ほど性感染症にかかりやすい、ともいわれています。

10~20代女性が性器クラミジア感染症を適切に治療せずに放置すると、不妊症、異所性妊娠、流早産、新生児への感染など、ゆくゆく非常に大きな問題が発生する可能性が高まります。

 

 

このように、性感染症が蔓延している日本の現状を考えれば、高校生に対してはもちろん、できれば中学生のうちから、適切な避妊や性感染症予防を中心とした性教育行うことが急務であると考えられます。