院長コラム

外陰部の“おでき・吹出物”

いわゆる“おでき・吹出物”は全身にできるため、通常は皮膚科を受診されると思いますが、外陰部にできた場合は婦人科を受診される方も少なくありません。
今回は、外陰部のおできの仲間、毛のう炎(毛包炎)、せつ(おでき・吹出物:フルンケル)、よう(カルブンケル)についてお話します。

 

 

(1) 外陰部毛のう炎(毛包炎)

皮膚に存在する黄色ブドウ球菌などが原因で発症し、陰毛の生えている局所の痛みを認めます。

毛のう炎(毛包炎)の場合は、一つの毛のう(毛包・毛穴)の内側に炎症が留まるため、周囲の炎症は軽度です。肉眼的には、毛穴を中心に赤く小さく腫上がっていますが、その径は2~3mm程度です。

治療は、抗菌外用剤「ゲンタシン軟膏」を1日数回、数日の塗布で軽快することがほとんどです。

 

 

(2) せつ(おでき・吹出物:フルンケル)

細菌感染が毛のう周囲から深部に広がると「せつ:フルンケル」と呼ばれ、毛のう炎より発赤・痛みが強くなり、約1cm程度の紅斑が認められます。

毛穴に一致して膿の栓が見られ、自然に破れて膿が排出すると治癒に向かいます

治療は「ゲンタシン軟膏」に加えて、抗菌剤の内服(メイアクトなど)、消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)を用います。

 

 

(3) よう(カルブンケル)

2つ以上の毛のうに同時に細菌が侵入したものを「よう(カルブンケル)」といい、より症状が強く、病変が深部に及び、数cm程度に広がる紅色の腫脹が見られます。

治療は抗菌剤の内服が主体ですが、症状によっては抗菌剤の点滴治療が必要になることがあります。
また、膿が溜まっている場合には切開して排膿する必要があります。

 

 

糖尿病に注意

「せつ」を繰り返したり、「よう」を発症した場合には、免疫力が低下している可能性があります。特に、頻回に繰り返す場合や難治性の場合は、糖尿病が隠れているケースも少なくありません。

反対に、糖尿病治療中の方が「せつ」や「よう」を発症した場合は、かかりつけの糖尿病専門医を受診し、きちんと血糖がコントロールされているかどうか、ご確認して頂くのがいいでしょう。

 

 

予防としては、外陰部を清潔に保ち、全身的な抵抗力を落とさないことが大切です。もし、毛のう炎になったとしても、早めの段階で抗菌外用剤による治療をされることをお勧めします。
尚、当院では軽症の「せつ」までの対応は可能ですが、症状が強く、重症化した「せつ」「よう」に対しては、皮膚科へ紹介させて頂いております旨、ご了承下さい。