院長コラム

4月からの新生活に向けて~月経困難症・月経前症候群への対策~

次第に春めいてきて、4月からの新生活を前に、期待に胸を膨らませている方も多いのではないでしょうか。しかし、月経トラブルが気になっている方も少なくないかも知れません。
月経困難症・月経前症候群(PMS)にお悩みの方は、新しいスタートに向けて、今から治療を始めて頂くことをお勧めします。

 

月経困難症への対策

月経困難症とは月経期間中にみられる病的症状で、下腹部痛・腰痛といった月経痛だけでなく、嘔気、頭痛、疲労、食欲不振、いらいら、下痢、憂うつなど多岐にわたります。
月経困難症がみられる方の中には、子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症といった婦人科疾患が隠れていることがありますので、月経時の症状が気になる方は、積極的に婦人科を受診しましょう。
これらの疾患がみられない場合は機能性月経困難症といい、子宮の過剰な収縮や月経血が排出する頚管が狭いことなどが原因と言われています。子宮筋を収縮させるプロスタグランディンという物質は、痛み物質とも呼ばれ、子宮内膜で産生されます。プロスタグランディンが多いと、子宮筋だけでなく腸管の筋肉も過剰に収縮し、下痢などの消化器症状をきたすことがあります。
プロスタグランディンを減少させるには、プロスタグランディンの合成を阻害する薬剤「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)」が第一選択であり、月経直前からロキソニン、ボルタレンなどを服薬することが有効です。ただし、NSAIDsを大量に服用すると胃潰瘍、胃腸炎などの副作用がみられることがあるため、短期的に用いることをお勧めします。
プロスタグランディン産生場所である内膜組織の増殖を抑制する薬剤には、「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)」と「黄体ホルモン製剤(ディナゲスト錠など)」があります。NSAIDsの短期服用で改善しない場合や経血量が多い場合には、子宮内膜を薄くさせるLEPまたはディナゲスト錠が非常に有用です。
その他、子宮筋の過収縮を抑制する「ブスコパン錠」、芍薬甘草湯、当帰芍薬散などの漢方薬を用いることもあります。
実際には、これらの薬剤を組み合わせながら処方しています。

 

PMSへの対策

PMSとは、月経前3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経が始まると軽快するものをいいます。PMSの原因は不明な点も多いですが、排卵後に分泌される黄体ホルモンや、月経前の女性ホルモンの急激な減少が影響しているともいわれています。
そのため、PMSの治療には、排卵を抑制するLEPが有用であるといわれており、特に連続投与法によりできるだけ月経回数を減らすことが勧められています。ちなみに、月経困難症も認める方は保険診療で処方が可能であるため、多くの場合LEPが第一選択となります。
また、月経前の抑うつやいらいら感がみられる場合は、「加味逍遙散」、「抑肝散」といった漢方薬が有用です。
中等度のうつ症状がみられる場合には「レクサプロ錠」といった選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ薬を用いることがあります。

 

新生活を控え、月経困難症やPMSを改善したい、とお考えの方は是非婦人科を受診して下さい。
症状や体質などに合わせて、治療法を考えていきます。
ただし、薬物療法と並行して、バランスの取れた食生活、適切な運動習慣、良質な睡眠といった生活習慣の見直しもお忘れなく。