院長コラム

黄体ホルモン製剤「デュファストン錠」の供給量減少に関連して

黄体ホルモン製剤「デュファストン錠」は古くから使用されており、産婦人科診療に欠かすことのできない製剤の一つです。
しかし、令和4
年4月以降、製造所の事情により製品供給が大幅に減少し、供給量の回復の目途が立っていないそうです。製薬会社や学会からは、代替可能な薬剤がある場合、「デュファストン錠」からの切り替えを推奨されています。
今回は、当院で「デュファストン錠」用いることが多い3つのケースについて、今後の方針を説明します。

 

更年期障害などに対するホルモン補充療法(HRT)

HRTは減少したエストロゲン(女性ホルモン)を補う治療です。子宮がある方にHRTを行う場合、エストロゲン製剤のみ長期間投与すると、子宮内膜がんのリスクが高まることが知られています。
子宮内膜がんの発生を予防するためには、子宮内膜組織の増殖を抑える黄体ホルモン製剤を併用する必要があります。
これまで、より天然型に近く、乳がんの発生リスクが少ない「デュファストン錠」を用いることが主流となっていました。
今後は「デュファストン錠」から、2021年11月に発売された新しい天然型黄体ホルモン製剤「エフメノカプセル」への切り替えを進めて参ります。

 

第一度無月経に対するホルムストローム療法

無月経には多く分けて、第一度無月経と第二度無月経があります。
第一度無月経は、エストロゲンは十分分泌されているものの、無排卵のために自前の黄体ホルモンが分泌されていない状態をいいます。
黄体ホルモン製剤を数日間服薬したあと休薬すると、月経のような子宮出血(消退出血)がみられます。このように「黄体ホルモン製剤の服用・休薬・消退出血」を数か月繰り返した後に自然の排卵・月経を期待する治療をホルムストローム療法といいます。
ここで用いる黄体ホルモン製剤は「デュファストン錠」が適しているため、現時点では切り替えせずに「デュファストン錠」を使用します。

 

第二度無月経に対するカウフマン療法

黄体ホルモンだけでなく、エストロゲンの分泌も低下している無月経を第二度無月経といいます。
第二度無月経に対しては、エストロゲン製剤「プレマリン錠」を3週間服用し、そのうち後半の約2週間、黄体ホルモン製剤を併用します。その後、1週間程両薬剤とも休薬して消退出血を促します。
このサイクルを数か月繰り返した後に、自然の排卵・月経を期待する治療をカウフマン療法といいます。
カウフマン療法で用いる黄体ホルモン剤は、これまで「デュファストン錠」が多かったのですが、今後はエストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤を併用していた期間は、二つのホルモンの合剤である「プラノバール錠」に切り替える予定です。

 

「デュファストン錠」は単価も安く、お財布にも優しい薬剤であるため、特にHRTで新薬「エフメノカプセル」に変更した場合、その費用の差に驚かれるかもしれません。
ただし、「エフメノカプセル」は世界的に主流となっており、「デュファストン錠」にはないメリットがあります。
当院では2022年11月頃を目途に、順次切り替えさせて頂く旨、ご了承下さい。