院長コラム

風疹を広げないためにワクチン接種を

わが国では、東京オリンピック・パラリンピックが予定されていた今年までに風疹感染者を0にすることを目標に、ワクチン接種の啓発など国を挙げて取り組んできました。
しかし、世界的な新型コロナウイルス感染拡大のためオリンピック・パラリンピックが来年に延期になり、風疹ワクチン接種の機運も下がってしまった感があります。
今回は、改めて風疹ワクチン接種の必要性ついて説明します。

 

風疹とは

風疹ウイルスが原因の感染症で、患者さんの飛まつ(唾液のしぶき)などでうつります。
潜伏期間は2~3週間で、発疹、発熱、首のリンパ節の腫れが典型的な症状ですが、感染しても無症状の不顕性感染の方も少なくありません(約15%)。
一度かかると抗体を獲得するため、多くの場合二度とかかることはありません。

 

先天性風疹症候群とは

風疹の抗体がない、あるいは抗体の力が弱い(HI抗体価16倍以下など)妊婦さんが、妊娠20週までに風疹ウイルスに感染してしまうと、様々な心身のトラブルを抱えた赤ちゃんが生まれる可能性があります。
これを、先天性風疹症候群といい、難聴・心疾患・白内障・精神あるいは身体発達障害などが認められます。
ちなみに、お母さんが症状のない不顕性感染であったとしても、先天性風疹症候群が発生します。

 

妊婦さんは接種できませんが、授乳婦さんは可能

風疹ワクチンあるいは麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)は生ワクチンといって、妊婦さんには接種することができません。また、妊娠していない女性が接種した場合は、2か月は避妊するようにしましょう。
一方、分娩後は授乳中であっても接種が可能です。当院では、妊娠初期検査で風疹抗体をもっていない方、あるいは抗体価が低い方を対象に、ご希望があれば、お産後の入院中にMRワクチンを接種しています。

 

妊婦さんのご家族の方は積極的にワクチン接種を

風疹の抗体がない、あるいは抗体価が低い妊婦さんと同居しているご家族の方には、是非MRワクチンの接種をお勧めします。
MRワクチンを接種してから3週間のあいだは、喉からワクチンウイルスの排泄が見られることもあるそうですが、他人に感染することはないとの事です。
特に、ご主人から奥さんへの感染が多いといわれていますので、ご主人には後悔する前にワクチンを接種してもらいましょう。
尚、仮に抗体価が十分にある方がワクチンを接種しても問題はないため、必ずしも接種前に抗体価を調べる必要はありません。

 

 

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、人混みを避ける生活習慣が広がりました。
風疹の感染予防にも、ワクチン接種と人混みを避けることが重要です。
様々な感染症から身を守るために、特に妊婦さんは引き続き“3密”を避けるよう心がけましょう。