院長コラム

子宮頚がん予防のためにHPVワクチン接種を

子宮頚がんは、子宮の入り口にできるがんです。性交によりハイリスクHPV(発がん性が高いヒトパピローマウイルス)が感染し、数年間排除されずに感染が持続することで、子宮頚がんが発生します。
病気が進むと不正出血、性交時出血などの症状が見られることがありますが、子宮頚がんの初期にはほとんど症状がなく、子宮頚がん検診を受けなければ早期発見は困難です。
したがって、子宮頚がんの予防としては定期的な子宮頚がん検査が必要ですが、できれば性交を経験する前にHPVワクチンを接種して頂くことが望まれます。
今回は、東京小児科医会と東京産婦人科医会が共同で作成しましたリーフレットを参考に、HPVワクチン接種について説明します。

 

子宮頚がんは出産・子育て世代の女性を直撃

子宮頚がんの好発年齢は20~30歳代で、この年代の子宮頸がん発症率は、1990年には10万人あたり7.8人でしたが、2014年には16.8人に倍増しています。さらに年間約3000名の女性が子宮頚がんで命を落としており、減少する兆しはありません。
このまま子宮頚がんになる方が増加すると、がんが進行して子宮を摘出せざるを得ない方が増え、その結果、妊娠ができなくなる方も増えます。
また、がんが早期の場合、円錐切除術により子宮が温存されて妊娠に至ったとしても、早い時期に早産となってしまうリスクが高く、生まれた赤ちゃんに障害が残る可能性もあります。

 

HPVワクチン接種が望まれる年齢

最もHPVワクチン接種が効果的なのは、性交を経験する前で、ワクチンに対する免疫反応が良好である思春期の方です。そのため、最もHPVワクチン接種が推奨される年代は10~14歳であり、続いて15~26歳といわれています。
ただし、27~45歳の方もワクチン効果が認められているため、ご希望される方には接種ができます。また、細胞診で異形成が認められたことがある方も、将来の感染を予防することが期待できるので、ワクチンを接種することが可能です。
ちなみに、世田谷区では、小学6年生から高校1年生相当の女子は、無料でワクチンを接種することが可能です。

 

HPVワクチン接種と子宮頚がん検診

ハイリスクHPVは約14種類の型がありますが、現在わが国のワクチンが対応できる型は、HPV16型とHPV18型の2つの型だけです。
しかし、この2つの型が最も発がん性が高く、16型と18型に有効なHPVワクチンを接種するだけで、子宮頚がんのリスクを6-7割減らすことができます。
さらに、予防を100%に近づけるために、性交経験のある20歳以上の方は2年に1回子宮頚がん検診を受けるようにしましょう。

 

わが国で現在接種可能なワクチンは「サーバリックス」(2価)と「ガーダシル」(4価)の二種類あり、どちらもHPV16型・HPV18型に有効です。
さらに「ガーダシル」は、尖圭コンジローマという性感染症の原因ウイルスであるHPV6型とHPV11型の感染も予防することができます。
そのため当院では、特に性交前の女性に対して、「ガーダシル」をお勧めしています。