院長コラム

里帰り分娩をお考えの方へ~当院から帰省先の分娩施設へ戻るタイミング~

今回は、当院で妊婦健診を受けられ、ご実家近くの施設で里帰り分娩を希望される方を対象に、当院から帰省先の分娩施設へ戻るタイミングについて説明します。

 

 

母児に異常がない“標準的”なケース

当院では、通常妊娠9週前後に予定日を決定し、妊娠初期血液検査および子宮頚がん検査を行なっています。原則として、里帰り先の分娩施設や担当医師の方針や考え方に沿ってスケジュールを立てますが、妊娠初期から中期にかけて、1回は診察が必要な施設が多いようです。その場合、血液検査・子宮がん検査の結果を添えて、1回目の紹介状をお書きします。

その後、妊娠32週頃まで当院にて妊婦健診や各検査を施行します。当院での最後の妊婦健診の際、これまで行なった各種検査結果などを含む情報提供書をお渡し、通常は妊娠34週頃に帰省先の施設へお戻り頂くようにしています。

尚、分娩後、早めにご実家から現在のお住まいに戻らないといけない場合は、母子の一か月健診を当院でみさせて頂くことも可能です。

 

 

骨盤位の場合

妊娠28週頃の健診で骨盤位が確認された場合、骨盤位を直す体操を指導します。また骨盤位を治すツボを刺激頂くために、近隣の鍼灸院・整骨院を紹介することもあります。妊娠30週になっても頭位になっていない場合は、早めに帰省先の施設へお戻り頂く事があります。なぜなら、骨盤位に対し帝王切開を選択する施設がほとんどであり、手術の日程を早めに決めないといけない場合があるからです。ただし、中には妊娠34週頃の帰院でも構わない施設もあるため、いつ頃戻るべきか、分娩施設の担当医と打ち合わせをして頂くことがあります。

 

 

妊娠糖尿病の場合

当院では、妊娠初期検査として随時血糖(食後2~4時間)を測定し、妊娠24週頃では50gグルコースチャレンジテストを行なっています。これらで妊娠糖尿病が疑われた場合は、精査として75g経口ブドウ糖負荷試験を行ないます。

その結果、妊娠糖尿病と診断された場合は更なる検査や栄養指導が必要で、中にはインスリン治療に至るケースもあります。
分娩先の施設が妊娠糖尿病の管理ができなければ、他の高次施設に転院しなければならないため、ゆとりをもって帰省先施設へお戻り頂く必要があります。

もし、分娩予定の施設が妊娠糖尿病の管理可能な高次施設であったとしても、早めにその施設での方針に沿って精査・加療した方が望ましいため、遅くとも妊娠28週頃までには紹介状をお渡ししています。

 

 

切迫早産の場合

下腹部痛や子宮収縮が軽度で、出血もほとんどなく、頚管長がある程度保たれているのなら、移動できるうちに早めにお戻り頂くようにしています。なぜなら、妊娠32週頃までこちらに残っていると、切迫症状が増強し、帰りたくても帰れない可能性が出てくるからです。

もし、切迫症状が軽減して妊娠36週まで妊娠が継続した場合、東京近郊であれば状況によって帰省頂くことも可能ですが、遠方(特に新幹線や飛行機での移動が必要な地域)であれば、当院または近隣施設での分娩をお勧めします。

尚、当院での管理が困難な切迫早産の方は、近隣の高次施設(国立成育医療研究センター、東京医療センター、日赤医療センターなど)へ紹介させて頂くことがある旨、ご了承下さい。

 

 

母児の状況によっては、予定よりも早く帰省することが望ましいケース、あるいは帰省を取りやめた方がいいケースなどがあります。
特に、お仕事されている方、上のお子さんがいらっしゃる方、里帰りしないと実母による育児サポートがうけられない方などは、あらかじめ様々な可能性を想定しておきましょう。