院長コラム

当院における妊婦さんの糖代謝異常スクリーニングと診断検査の流れ

3月10日は“砂糖(3さ・10とう)”の日です。
今回は“糖”にちなんで、当院における妊婦さんの糖代謝異常スクリーニングと診断検査の流れについて説明します。

 

 

(1)1回目スクリーニング

妊娠初期の高血糖が胎児形態異常と関連していることは以前から知られており、「産婦人科診療ガイドライン 産科編2017」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編集・監修)でも、全妊婦さんに対して糖代謝異常のスクリーニングを行なうことが推奨されています。

当院では妊娠9週頃に、血液型、各種感染症検査、貧血検査などと一緒に、血糖値(随時血糖)を調べています。原則として食後2~4時間に採血をしており、随時血糖値110mg/dl以下を正常と判定しています。

ご来院時の2時間以内に経口摂取された方には、採血時間を調整するために少しお待ち頂く事があります。また、随時血糖値が110mg/dlを超えた方はスクリーニング陽性者として、後日診断検査を受けて頂きます。

尚、随時血糖値が200mg/dlを超えた場合は、妊娠中の明らかな糖尿病である可能性が高いため、この時点で高次施設(日赤医療センター、国立成育医療研究センターなど)へ紹介致します。

 

 

(2)2回目スクリーニング

妊娠初期のスクリーニングで問題なかった妊婦さんでも、妊娠中期以降に糖代謝異常を認めることがあります。もし、妊娠中後期に糖尿病が管理されないままでいると、巨大児やそれに伴う難産、胎児発育不全、新生児の低血糖や呼吸不全など、様々なトラブルが発生する可能性があります。そこで、「産婦人科診療ガイドライン 産科編2017」では、妊娠中期にもスクリーニング検査することが勧められています。

当院では2回目のスクリーニングとして、妊娠24週頃に50gグルコースチャレンジテストを行っています。このテストは、検査前の経口摂取の有無は問いません。まず、50gブドウ糖の検査用サイダーをお飲み頂き、1時間後の血糖値を調べます。その結果が140mg/dl未満を正常とし、140mg/dl以上をスクリーニング陽性者として、後日診断検査を受けて頂きます。

 

 

(3)妊娠糖尿病診断検査
 
スクリーニング陽性となった妊婦さんには、禁飲食の状態で、検査日の朝9時頃ご来院して頂きます。妊娠糖尿病診断検査として、75gブドウ糖経口負荷試験を行ないます。

まず、空腹時に採血した後、75gブドウ糖の検査用サイダーをお飲み頂きます。そして、サイダーを飲んで1時間後、更にもう1時間後(サイダーを飲んで2時間後)に採血します。合計3回血糖値を調べ、①空腹時血糖:92mg/dl以上、②1時間値:180mg/dl以上、③2時間値:153mg/dl以上の基準のうち、1点以上を満たした場合を妊娠糖尿病と診断します。

尚、空腹時血糖が126 mg/dl以上または2時間値が200 mg/dl以上に場合は、妊娠中の明らかな糖尿病として、その時点で高次施設へ紹介することになります。

 

 

75gブドウ糖経口負荷試験で妊娠糖尿病と診断された方は、主に東京医療センターへ紹介しております。そこでは更なる精査や食事指導などが行なわれます。
当院で分娩予定の方で、食事指導のみで血糖がコントロールできる状態でしたら、当院で分娩管理することも可能です。
ただし、インスリン治療となってしまった妊婦さんは、出産後に新生児管理が必要になることもあり、そのまま東京医療センターで分娩管理をして頂くことになる旨、何卒ご了解下さい。