院長コラム
毎年血中コレステロール値を調べていますか?
コレステロールは、細胞の膜やホルモンを作る材料となる非常に重要な物質であり、LDLコレステロール(悪玉)とHDLコレステロール(善玉)の二種類があります。LDLは肝臓で作られたコレステロールを全身に運び、HDLは余分な血中のコレステロールを回収して肝臓に戻す働きがあります。
今回は、女性ホルモンとの関連も深い脂質異常症について、「産婦人科医のための生活習慣病診療マニュアル2020」(日本産婦人科医会)などを参考に、情報を共有したいと思います。
過剰な血中LDLコレステロールは動脈硬化の要因
通常、LDLコレステロールとHDLコレステロールとの共同作業によって、血中コレステロールのバランスはとられています。しかし、何らかの原因で全身に運ばれるLDLコレステロールが増え、HDLによる回収が追いつかないと、脂質異常症という状態になります。
この状態を長期間放置していると、動脈の血管壁にLDLコレステロールが溜まり、動脈硬化をきたします。動脈硬化が悪化すると動脈が狭くなり、さらに進行すると動脈が詰まってしまい、重篤な状態になります。
例えば、心臓を栄養する血管が動脈硬化になれば狭心症や心筋梗塞を、脳の動脈であれば脳梗塞などを引き起こす可能性があります。
脂質異常症診断の目安
脂質異常症の検査は、空腹時(10時間以上の絶食。ただし、水やお茶などのカロリーのない水分の摂取は可。)の血液検査で行います。
- LDLコレステロール:
140mg/dl以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/dl 境界域高LDLコレステロール血症
- HDLコレステロール:
40mg/dl未満 低HDLコレステロール血症
- 空腹時中性脂肪:
150 mg/dl以上 高トリグリセライド血症 - non-HDLコレステロール:
170 mg/dl以上 高non-HDLコレステロール血症
150~ 169mg/dl 境界域高non-HDLコレステロール血症
女性と脂質異常症
女性ホルモンであるエストロゲンは、善玉のHDLコレステロールを増加させ、悪玉のLDLコレステロールを低下させます。また、血管拡張作用、血管の老化防止といった作用もあるため、性成熟期女性の動脈硬化の発症率は男性と比べて低いことが知られています。
ところが、閉経後エストロゲンが低下すると、HDLコレステロールが減少し、LDLコレステロールが増加する上、血管の老化が進行するため、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患のリスクが高まります。
尚、一般的に閉経前の脂質異常症の頻度は少ないですが、それにもかかわらず脂質異常症と診断された場合は、加齢やエストロゲン低下が原因ではなく、家族性高コレステロール血症や甲状腺機能低下症など、内科的な疾患が隠れている可能性が高いため、早めに内科専門医の診察を受けることをお勧めします。
世田谷区をはじめ多くの自治体では、40歳以上の健康診断は助成対象となっています。閉経後の方はもちろん、できれば閉経前から年に1回、脂質検査を含む内科的な健診を受けるようにしましょう。もし、異常値が見つかった場合は、放置せずにかかりつけ医へご相談下さい。