院長コラム

当院で甲状線機能亢進症(バセドウ病)の有無を調べる場面

甲状腺とは喉仏の下あたりにある臓器で、甲状腺ホルモンを分泌しています。
甲状腺ホルモンは体の新陳代謝を活発にする作用があり、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)にて調節されています。
甲状腺機能の異常は女性の体調に大きく影響を及ぼしますが、今回は当院で甲状線機能亢進症(バセドウ病)の有無を調べる場面について説明します。

 

月経と甲状腺機能

甲状腺機能は月経にも影響を及ぼしており、甲状線機能亢進症女性のうち、65%が月経異常を認めるといわれています。
排卵が起こるには黄体化ホルモン(LH)が急激に増加すること(LHサージ)が必要ですが、甲状腺ホルモンが多いとLHサージが起きず、排卵障害をきたすことが多いようです。
また、甲状腺ホルモンが過剰になると、血液凝固に関係する因子の産生が増加し、血液が固まりやすくなります。つまり、甲状線機能亢進症の方は、経血量が減少する傾向にあります。
以上のことから、無月経や過少・過短月経といった月経異常がみられた場合は、バセドウ病の鑑別のためにTSHや甲状腺ホルモン(fT3、fT4)を検査することがあります。
尚、一般的に甲状線機能亢進症の場合、TSH値は低値、甲状腺ホルモン値は高値となります。

 

妊娠初期の血液検査

当院では、妊娠9週頃に各種血液検査を行っていますが、原則としてTSHも全例調べています。
妊娠初期は、胎児の新陳代謝も母体が担っているため、一時的に甲状腺機能が亢進します。
ただし、中には病的な甲状線機能亢進症が隠れている場合があるため、TSHが妊娠初期の基準値を下回る場合、fT3、fT4およびTSH受容体抗体(TRAB)を調べています。
その結果、fT3、fT4が高値であっても、TRABが低値であれば、妊娠初期一過性甲状腺機能亢進症と考えられ、特に治療の必要はありません。
もし、TRABが陽性であればバセドウ病と考えられ、治療しないと母児に影響を与えることがあるため、内分泌内科門医のいらっしゃる高次施設へ紹介することになります。。

 

更年期障害と甲状腺機能亢進症

45~55歳の女性で、ほてり、発汗、動悸、いらいら、疲労感といった症状が認められた場合、女性ホルモンの低下による更年期障害である可能性が高いですが、甲状線機能亢進症の患者さんでも、これらと同じような症状を認めることがあります。
そのため、当院では更年期症状がみられる方に対し、女性ホルモン関連の検査に加えて、TSH、fT3、fT4の検査も行うことがあります。

 

当院でバセドウ病など甲状腺機能異常が見つかった場合、
○とも内科クリニック(桜新町)
○あきら内科(用賀)
○自由が丘内科クリニック(自由が丘)
○五十子クリニック(経堂)
など、甲状腺疾患に詳しい専門医のいらっしゃる近隣のクリニックを紹介させて頂いております。