院長コラム

精神的ストレスから身を守るための漢方薬

先日、漢方医療に詳しい精神科の先生によるWEB講演会がありました。
今回、この講演会の内容などを参考に、精神的ストレスに有効な漢方薬について情報を共有したいと思います。

 

  • まわりに気を遣い過ぎて、びくびくしてしまう方に
    ~柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)~

柴胡加竜骨牡蛎湯は、比較的体力がある方の、ストレスによる動悸・不眠・いらだち等の精神症状に対して効能・効果があります。
この漢方薬には、抗ストレス作用を持つ「柴胡」、抗うつ作用を持つ「半夏」、抗不安作用を持つ「茯苓」、神経過敏に有効な「牡蠣」などの生薬が含まれています。
まわりに気を遣い過ぎて“びくびく”してしまう方、ストレスにより動悸・頭痛・肩こりなどの身体症状がみられる方などに有効とのことです。

 

  • 感情を表に出せない中間管理職や、パワハラ上司によるストレスが辛い方に
    ~四逆散(シギャクサン)~

四逆散は、比較的体力があり、胃部・肋骨下部の圧痛、腹直筋の硬直などがみられる方の、いらいら・不眠・抑うつ感などの精神症状に効能・効果があります。
この漢方薬は、抗ストレス作用を持つ「柴胡」、けいれんを止める「芍薬」「甘草」、抗うつ作用を持つ「枳実(キジツ)」の4つの生薬から成っています。
感情を表に出さずに、内にストレスを溜め込んでしまいがちな中間管理職の方、パワハラ上司によるストレスで不眠・下痢・腹痛・手足の冷えなどがみられる方に有効のようです。
また、緊張などで“頭が真っ白”になった時に頓服することも可能とのことです。

 

  • いじめやストレスにより、言葉にできないイライラや怒りが慢性化している方
    ~抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンチンピハンゲ)~

いらいら、怒りっぽい、不眠の方に処方することが多い抑肝散に、「陳皮」「半夏」を加えたものが抑肝散加陳皮半夏です。
抑肝散が、体力が中等度の方の、比較的急性期のいらいら感や易怒性に対して用いられるのに対し、抑肝散加陳皮半夏は、比較的体力が低下している方で、症状が慢性化している場合に用いることが多いようです。
いつもいじめられている(と感じている)方や、いらいら感などの精神症状が長引いている方で、怒りの気持ちを適切な言葉で表すことができないため、さらにいらいら感が強くなってしまう事があれば、抑肝散加陳皮半夏は症状改善の一助になるかも知れません。

 

これら以外にも、精神症状に有効な漢方薬は数多くあり、体質や症状に合わせて選択することになります。
当院でも、月経前症候群、産後のメンタルトラブル、更年期障害としての精神症状に対して、漢方療法を行うことが少なくありません。
ただし、精神症状が強く長引いている方は、必ずメンタルクリニックを受診されて、カウンセリングや適切な薬物療法を受けるようにしましょう。