院長コラム

ホルモン補充療法に期待される歯科口腔エリアへの効果

11月8日は「いい(11)は(8)」の日だそうです。
今回は「いい歯」にちなんで、ホルモン補充療法(HRT)に期待される歯科口腔エリアへの効果について、「ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版」を参考に説明します。

 

HRTは歯の喪失や入れ歯の必要性、歯周疾患を防止する可能性があります

アメリカの研究によると、HRTを施行している人は、施行していない人と比べて、歯が喪失している率や入れ歯を使用している率が低いとのことです。
さらに、HRTの期間が長いほど、歯の喪失数、入れ歯使用者数が少ないとの報告もあります。
これらの研究報告から、「HRTは歯の喪失や入れ歯の必要性を防止する可能性がある」といわれています。
また、HRT施行者の歯周炎のリスクは未施行者よりも低いとの報告もあり、HRTは歯周疾患の予防もしくは改善する可能性も指摘されています。

 

HRTは口腔内乾燥を改善する可能性があります

更年期障害といえば、ほてり、のぼせ、発汗などの症状が代表的ですが、口腔乾燥感がみられることも少なくありません。
ただし、エストロゲンの減少が直接、口腔乾燥感を引き起こしているのか、更年期障害などのストレスが原因となっているのかは不明です。
そのため、口腔乾燥感の治療としてHRTを行うことは多くはありませんが、ある調査によると、刺激唾液分泌量が正常の人はHRT施行者で70%以上でしたが、HRT未施行者では40%未満であったそうです。
また、HRTにより安静時唾液分泌量が増加し、口腔乾燥感が低下したとの報告もあるため、「HRTは口腔内乾燥感を改善する可能性がある」と、ガイドラインでは記載されています。

 

HRTは口腔の不快感を減少させる可能性があります

オーストラリアの研究によると、3か月のHRTによって、口腔の不快感があった更年期女性の半数以上に、症状改善がみられたそうです。
また、口腔乾燥感、灼熱感、味覚障害を訴える更年期女性にHRTを行うと、口腔粘膜細胞の成熟度が改善したとの報告もあります。

 

HRTによる歯科口腔系疾患の改善・予防効果については、未だ不明な点も多くあります。
また、あくまでもHRTは、エストロゲン低下に伴う更年期障害や閉経後骨粗しょう症に対する治療法です。
しかし、HRTにより歯科口腔環境が改善する可能性があることは、HRTを継続するかどうかを決める上で、判断の一助になるかもしれません。