院長コラム

流産の診断までの流れ

妊娠22週未満での妊娠の中断を流産といいますが、臨床的に確認された妊娠の約15%が流産となることが知られています。また、妊娠女性の約4割の方が流産をご経験してされているとの報告もあります。
今回は、当院における流産と診断するまでの流れについて説明します。

 

自然妊娠の経過

排卵日(妊娠2週)前後に性交し、卵子と精子が受精すると、そこから約1週間後に受精卵が子宮内膜に着床します。これを妊娠の成立といいます。
着床から約1週間経過すると、妊娠反応検査で陽性となり始め、さらに1週間経過すると(排卵日から3週間後:妊娠5週)、子宮内に胎嚢という袋が超音波検査で認められるようになります。
更に1週間後の妊娠6週頃には、数mmの胎芽(妊娠10週未満の赤ちゃんの呼び名)および心拍がみられ、妊娠7週頃には胎芽も1cm程に大きくなり、心拍もはっきりわかるようになります。

 

子宮内の胎嚢は見えるが胎芽が確認できない場合

月経周期が28日型の方の多くは、月経14日目頃に排卵しますが、排卵が後ろにずれ込むことも少なくありません。
ましてや月経周期が30日以上の方の場合、基礎体温表を付けていなければ、排卵日を推定することは容易ではありません。
そのため、最終月経からの計算上妊娠6~7週頃の超音波検査で、胎芽が確認できないからといって、直ちに流産であるとは断定できません。
その場合、明らかな胎嚢が確認できた日(妊娠5週相当)から1~2週間後(妊娠6~7週相当)に再検し、胎芽・心拍を確認します(場合により複数回)。
その結果、もし妊娠7週相当にもかかわらず、胎芽が確認できないのであれば、妊娠5週相当の稽留流産と診断します。

 

胎嚢内に胎芽・胎児は確認できるが、心拍がみられない場合

妊娠6週頃には胎芽および心拍がみられることも多いのですが、心拍が見えづらいことも少なくありません。そのため、1~2週間後に再検し、胎芽・心拍を確認します(場合により複数回)。
もし、妊娠7~8週にも関わらず心拍が確認できない場合は、妊娠5~6週の稽留流産と診断します。
また、妊娠6週以降に、それまで認められていた心拍が確認できなくなってしまった場合は、後日再度確認します。
もし、数回にわたり心拍がみられない場合は、最初に心拍が確認できなかった時点での胎芽・胎児(妊娠10週以降の赤ちゃんの呼び名)の大きさから週数を割り出し、稽留流産と診断します。

 

他院で稽留流産と診断され、流産手術目的やセカンドオピニオン目的で当院を受診される方も少なくありません。
基礎体温を連日付けている方、体外受精でご妊娠された方など、妊娠週数が確定されている方であれば、同日に診断させて頂ける場合があります。
ただし、妊娠週数が不確実の場合、数日かけて慎重に流産の診断をしております旨、ご了承下さい。