院長コラム

機能性子宮出血の診療について

機能性子宮出血とは、子宮がんや子宮筋腫などの疾患を認めない子宮からの不正出血をいいます。ほとんどはホルモン異常が原因であり、過多月経も一緒に認める方も少なくありません。
今回は、当院における機能性子宮出血に対する診療の流れについて説明します。

 

 

妊娠・器質的疾患の否定

月経以外の不正出血が認められた方で、最終月経がはっきりしない場合は、まず妊娠反応検査で妊娠していないことを確認します。

次に子宮がん検査を行ないます。通常は子宮頚部細胞診を行い、必要に応じて子宮内膜の細胞診や組織診を行ないます。尚、出血量が多い場合は、細胞診による評価が困難になるため、ある程度止血した後に検査します。ただし、子宮頚部細胞診の場合、少量~中等度程度であれば液状検体による検査が可能です。

その他、子宮内膜を圧迫するような子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどの有無を超音波で確認し、出血の原因となるような子宮頚管ポリープがあれば外来で切除します。

 

 

止血剤による治療

少量で短期間の出血であれば止血の必要はありませんが、血の塊が出るほどの出血や長期間にわたる出血の場合、貧血の原因になることがあります。そのような時は不正出血の原因が何であれ、まずは止血剤による治療を行ないます。

血管を補強し、凝血作用を高めるため、アドナ錠(3錠/日)およびトランサミン錠またはカプセル(3錠または3カプセル/日)を5~7日間服薬します。

止血剤よりも効果が高いと思われるのは、中用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬です。通常は、1日1錠を約7~10日間服薬して頂きます。ホルモン剤の服薬により、子宮内膜が安定化し、剥がれ落ちるのを防ぎ、止血効果が発揮されます。尚、服薬終了して数日後、月経のような出血が認められ、内膜がリセットされます。

また、痔出血に保険適応があるキュウ帰膠艾湯という漢方薬を数週間用いることもあります。単独で使用することもありますが、止血剤やホルモン剤と併用することが多いです。

 

 

挙児希望のない方の治療

機能性子宮出血と診断した場合、すぐに妊娠を希望するか、希望しないかによって対応が分かれます。

すぐに妊娠は希望せず、むしろ避妊したい、という方には低用量ピル(OC)を使用します。通常、21日間実薬を服薬し、1週間の休薬または偽薬服用の時期に月経様の出血が起きるようにします。服薬開始後数か月はむしろ不正出血が頻発するかもしれませんが、その後出血は軽快し、月経様出血も減少していきます。

ちなみに、月経痛も認める方には、月経困難症として保険適応のある低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(ヤーズ錠、ヤーズフレックス錠、ルナベル錠、ジェミーナ錠など)や子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS:ミレーナ 過多月経にも保険適応)を使用することもあります。

 

 

挙児希望のある方の治療

なるべく早い妊娠のご希望があれば、毎朝基礎体温を計測して頂き、排卵の有無を確認することが必要になります。

もし、卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌しているにも関わらず、基礎体温は一相性で無排卵であるのであれば、エストロゲンの分泌低下に伴う不正出血かもしれません

不正出血の治療および不妊治療として、出血5日目から排卵誘発剤であるクロミッド錠(1錠/日)5日間を服薬する方法もあります。

 

 

月経以外の不正出血は、生活の質を下げるだけでなく、貧血に繋がる可能性があります。
たとえ各種検査の結果、子宮頚がんや子宮体がんなどの重大な病気が見つからなかったとしても、止血剤、各種ホルモン剤、漢方薬などを用いて、不正出血という不快な症状を取り除きましょう。