院長コラム

月経困難症に対する女性ホルモン療法

月経期間中に起こる病的な症状を「月経困難症」といいます。
具体的には、下腹部痛・腰痛・嘔気・頭痛・疲労感・いらいら・憂うつ・下痢など、様々な身体的・精神的症状がみられます。
今回、月経困難症に対する女性ホルモン療法について、当院での対応を交えながら説明します。

 

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)

月経困難症は、子宮内膜組織から分泌される「プロスタグランディン」という物質が、その原因の一つと言われています。プラスタグランディンは痛み物質であり、子宮筋を収縮させる作用があるため、プロスタグランディンの産生を抑えることが月経困難症の治療に繋がります。
エストロゲンとプロゲスチンという2つの女性ホルモンから成るLEPは、1日1錠の服用で子宮内膜を薄くさせる作用があり、結果的にプロスタグランディンの産生が減少し、月経困難症が軽快します。
さらに、排卵を抑える効果があり、月経前症候群(PMS:月経前のいらいら、抑うつ、乳房痛など)の軽快も期待できます。
また、LEPは長期間連続して服用することも可能であり、服用中排卵も月経をきたすことはありません。
そのため、当院では月経困難症に加えてPMSがみられる方、避妊をご希望される方にはLEPを第一選択としています。
ただし、LEPに含まれているエストロゲン成分は血栓症をきたすリスクが高いため、血栓症の既往のある方にはLEPは使用できず、40歳以上の方には慎重に処方する必要があります。

 

黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト0.5㎎)

黄体ホルモン製剤であるジエノゲスト0.5㎎も、子宮内膜組織の増殖を抑える作用があり、1日2回の服用とはなりますが、月経困難症によく使用される薬剤です。
排卵を抑制する作用もありますが、LEPに比べてその効果は確実とはいえないため、PMSが強い方、避妊も希望されている方には、当院ではLEPをお勧めしています。
それでも、ジエノゲストには血栓症の副作用がないため、血栓症・動脈硬化・高血圧症などの合併症・既往歴がある方には第一選択となります。
また、LEPもジエノゲストも、初経後の思春期女性に使用可能ですが、あまり若い時期にLEPを服用すると、将来の骨量に影響を及ぼすとの報告もあります。特にルールはありませんが、当院では14歳未満の女子にはジエノゲストを主に処方し、15歳以上の女子には排卵抑制効果が強いLEPを主に処方しています。

 

上記2種類の内服薬以外には、分娩の経験がある方に対し黄体ホルモン放出子宮内システム(IUS:ミレーナ)を子宮内に留置することがあります。
排卵を抑えることはないのでPMSには効果はありませんが、避妊効果は約100%でLEPと同等です。
当院では、患者さんの状況やご希望などから、個々に合った最善の女性ホルモン製剤を選んでおりますので、是非お気軽にご来院下さい。