院長コラム

月経前症候群(PMS)に対する治療薬の使い分け

PMSとは月経前3~10日間にみられる精神的・身体的症状で、月経が始まると軽快・消失します。原因は不明ですが、排卵後に分泌される黄体ホルモンの関与や心理社会的ストレスなどの影響が指摘されています。
今回、「日本産科婦人科学会雑誌2020年12月」などを参考に、PMSに対する治療薬の使い分けについて説明します。

 

症状が軽く短期間で、服薬を最小限にしたい方⇒対症療法

あまり薬を飲みたくない方に対しては、屯服薬で様子をみます。特に、軽度な乳房痛や下腹部痛、頭痛が短期間である場合には、消炎鎮痛剤であるロキソニンを処方し、屯服して頂くことがあります。

 

軽度から中等度で、月経困難症も認める方⇒低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP製剤)

排卵を抑制し女性ホルモンの血中濃度を一定に保つには、LEP製剤の連続投与が有用です。
特に、ヤーズフレックス配合錠はPMS治療の第1選択となっており、当院でも多くの方に処方しています。
ただし、月経時に下腹部の痛みや違和感、体調不良など、月経困難症の症状が全くみられなければ、保険診療で処方することはできない旨、ご了承下さい。

 

抑うつなど精神症状がメインの方⇒SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

SSRIはうつ病の治療薬ですが、抑うつなど精神症状がメインのPMSにも有用です。
その場合、連続服用も可能ですが、排卵から月経開始までの期間のみ服用し、その後は休薬するといった周期服用も有効です。
ただし、若年者の場合は攻撃性が高まるといった副作用があるため、他の治療薬を選ぶことが多いようです。

 

LEP・SSRIを服用できない方、服用しても改善しない方⇒漢方薬

漢方薬は中等度までのPMSに対して用いられることが多く、特に精神症状に有用です。
抑うつ傾向が見られる場合は加味逍遥散(カミショウヨウサン)、加味帰脾湯(カミキヒトウ)など、いらいら感が強い場合は抑肝散(ヨクカンサン)、抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)などを当院では処方しています。

 

実際の臨床では、症状、体質、生活様式などを踏まえつつ、LEP製剤、漢方薬を組み合わせて治療にあたっています。
また、SSRIで改善しない精神症状が主体の方は、必要に応じてメンタルクリニック受診をお勧めしています。
日本人女性の95%は何らかの月経前症状があるそうです。PMSを軽快させて、生活の質を上げるようにしましょう。