院長コラム

更年期障害としての睡眠障害に対する治療薬

寝つきが悪い入眠困難や、睡眠中に目が覚めてしまう中途覚醒といった睡眠障害は、更年期障害として認められる事が少なくありません。
不眠は閉経周辺期女性の30~40%にみられるともいわれており、日常生活に支障をきたすことも多いようです。
今回、「産婦人科処方のすべて2020」(医学書院)を参考に、当院でも処方することが多い、睡眠障害に対する治療薬について説明します。

 

ホルモン補充療法(HRT)

夜間のほてり、発汗などが原因で不眠になるケースがあります。
HRTはそのような更年期症状に対して非常に有用であり、ほてり、発汗を抑えることで結果的に不眠が改善されることをしばしば経験します。
特に、子宮を有している方に対して、子宮体がん予防のために使用する黄体ホルモン製剤「エフメノカプセル」は、睡眠の質を上げることが知られています。
当院では、HRTで使用する黄体ホルモン製剤は、「エフメノカプセル」を第一選択としています。

 

催眠・鎮静薬

一般的に不眠症に対しては、催眠・鎮静薬が使用されます。
当院では、入眠が困難な方に対して、「超短期作用型」の「マイスリー錠」を処方しています。脱力や転倒などの副作用は少ない一方、中途覚醒される方にはあまり有用でないかも知れません。
不安感が強く、寝つきが悪い方には、「短期作用型」である「レンドルミン錠」を処方することがあります。精神症状が強い更年期障害の方に有用ですが、もうろう・ふらつきなどの副作用があるため、注意が必要です。
中途覚醒がみられる場合、入眠改善と睡眠維持作用が期待できる「ベルソムラ錠」や「中間作用型」の「ドラール錠」が使用されることがあります。

 

漢方薬

更年期障害の精神症状に対する治療として用いられる「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」「加味帰脾湯(カミキヒトウ)」「抑肝散(ヨクカンサン)」などは、不眠に対しても有用な場合があります。
また、当院では催眠・鎮静薬による副作用を気にされる方に、「酸棗仁湯(サンソウニントウ)」を就前に服用して頂く事もあります。

 

当院では睡眠障害を更年期症候群の一つとしてとらえ、上記薬剤を組み合わせながら治療しています。
そのため、治療効果が不良な強い不眠の場合は、メンタルクリニックでの診察をお勧めしています。
尚、不眠に悩まれている更年期女性の方は、規則的な生活リズムや、適切な運動・食事・飲酒・入浴といった生活習慣を心掛けるようにしましょう。