院長コラム

更年期症状としての「めまい」に対する漢方療法

「めまい」を訴える方は、まずは耳鼻咽喉科や脳神経外科の診察を受けて、診断・治療をして頂く必要があります。
ただし、明らかな原因疾患が見られない更年期女性の場合は、更年期障害である可能性もあります。「めまい」は「のぼせ」「発汗」程ではありませんが、更年期障害患者さんの約半数にみられるとの報告もあります。
通常の更年期症状はホルモン補充療法(HRT)が有効ですが、「めまい」に対しては効果が少ないとも言われています。そのような方に対して、当院では漢方薬を使用しています。
中でも、特に「めまい」に有効な漢方薬3剤について、株式会社ツムラのリーフレットなどを参考に説明します。

 

  • 五苓散(ゴレイサン)

めまいに対して用いることの多い「五苓散」は、口渇や尿量減少の改善を目的としており、浮腫・悪心・嘔吐・下痢がみられる方に有効です。
特に、低気圧が近づいて天候が崩れるときに認める頭痛や、暑気あたりにみられる下痢に対して有用であるといわれています。
また、五苓散は更年期女性だけでなく、妊婦さんの浮腫や下痢にも用いることができる、大変使い勝手がいい薬剤です。
尚、二日酔や胃内に水分が貯留している症状にも有効とのことです。

 

  • 苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)

比較的体力が低下した方の、めまい、たちくらみ、頭痛、ふらつき、動悸・息切れに用います。
また、精神症状にも有効で、神経質、ノイローゼなどがみられる場合には苓桂朮甘湯を選択しています。

 

  • 半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)

五苓散・苓桂朮甘湯と比べて、より体力が低下し、胃腸虚弱な方には半夏白朮天麻湯を処方します。
めまい、持続性のあまり激しくない頭痛、頭重感、下肢の冷えに有効で、悪心、嘔吐、食欲不振、全身倦怠感などを伴う時に用いられます。

 

更年期障害に対する代表的な漢方薬である当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸も、めまいの改善に有用といわれています。
もし、めまいの改善効果が弱い時には、五苓散・苓桂朮甘湯・半夏白朮天麻湯を併用します。
ただし、めまいには重篤な病気が隠れている場合がありますので、漢方療法で改善しないときには、めまい専門医による診察を受けるようにしましょう。