院長コラム

更年期女性のお悩みとホルモン補充療法

閉経をはさんで前後5年間、およそ45~55歳の年代を更年期といいます。この時期はエストロゲンという女性ホルモンの分泌が急激に低下するため、心身に様々な症状があらわれ、更年期障害のために日常生活に支障を来たす方も少なくありません。
今回は、先日WEBで開催された「2020年度女性セミナー」の講演内容を参考に、更年期女性のお悩みとホルモン補充療法(HRT)について説明します。

 

1.更年期に入ると、肌の潤いが失われ、弾力性が弱まる

エストロゲンは、皮膚の厚みやコラーゲン量の保持、保水効果、創傷治癒などに関与していることが知られています。
更年期女性はエストロゲン低下に伴い、皮膚のしわ、乾燥感、膣粘膜の萎縮症など、さまざまな皮膚・粘膜症状が見られます。
しかし、HRTを行うことで、皮膚のコラーゲン量が増加し、厚みが増す可能性があり、皮膚表層組織の「きめ細やかさ」を改善する効果も報告されています。
これらは、顔や首の「見た目」を左右するため、ほうれい線やシワ、首の皮膚のたるみなどが気になる閉経後の女性は、HRTをご検討下さい。

 

2.更年期に入ると、夜寝ている時に目が覚め、眠れなくなる

更年期女性の不眠症状はのぼせ、ほてりなどの血管運動神経症状だけでなく、うつや不安などの精神症状に関連しています。
そのため、睡眠中に目が覚め(夜間覚醒)、再び眠ろうとしても寝付けない(再入眠困難)といった睡眠障害を訴える方も少なくありません。
HRTにより血管運動神経症状が改善され、抑うつや不安感が軽快することで、有意に不眠が改善されます。
確かに、睡眠薬の方が効果は大きいですが、ふらつきなどの副作用を考えると、更年期症状を有する不眠の方は、まずHRTで様子を見ることをお勧めします。

 

3.更年期に入ると、内臓脂肪が増加し、ウエストが太くなる

エストロゲンが低下すると、体脂肪の分布が変化することが知られています。
性成熟女性は、内臓脂肪よりも皮下脂肪が多いですが、更年期以降は内臓脂肪が増加します。腹囲は内臓脂肪量を反映しているため、内臓脂肪が増えれば、お腹も大きくなっていきます。
HRTは、内臓脂肪量を減らし、ウエストを細くするといった報告もあり、メタボリックシンドロームの予防効果も期待できます。

 

HRTは更年期障害、閉経後骨粗鬆症などの治療に大変有用ですが、お顔の印象、睡眠の質、体形などに関する“お悩み”にも、改善が期待されます。
ホルモン剤が禁忌でないのであれば、人生の質(QOL)を向上させるために、HRTをご検討下さい。